ボクシング史上初の兄弟タイトル戦は「話題性優先だった」「10回くらい断った」 弟の江口勝昭が明かす30年前の死闘の裏側 (2ページ目)
●「こいつ、マジで殴ってきやがったな」
そしてタイトルマッチ当日。1ラウンド、先制したのは九州男だった。左ボディブローが決まり、勝昭はダウンした。
「こいつ、マジで殴ってきやがったなとめちゃくちゃ思いました。俺はやるしかないと思ってたものの本当に殴り合えるのか半信半疑で、少し遠慮してた部分もあったかもしれない。でも、あのボディで完全に目が覚めた。試合を早く終わらせるために立つなって言ったやつもいたけど、それは茶番だから」
1993年6月5日に後楽園ホールで行なわれたストロー級王座決定戦の兄弟対決 撮影/ボクシング・ビートこの記事に関連する写真を見る 2ラウンド、闘志に火がついた勝昭が今度は左フックでダウンを奪う。その後は九州男が試合を優位に進め、決着は6ラウンド。九州男が左アッパーを決めTKO勝ちを果たした。
しかし、チャンピオンの座についたにもかかわらず、九州男に笑顔はなく、コーナーに顔をうずめていた。
「最後は『あしたのジョー』に出てくるようなアッパーでしたよ。わざともらったのかって聞かれるような面白いパンチで俺も避けられると思ったんだけど......。兄貴のほうが一枚上手だった。今もたまに(アゴが)痛むんですよ、ビリビリって」
勝昭の心のなかに試合前にあったほのかな自信が打ち砕かれたが、すがすがしい表情でこう語る。
「ジムでのスパーリングとかだと兄貴を押している時もあって、もしかしたら勝てるかもしれないっていう気持ちもあったのは確かです。だけど、やってみて3ラウンドくらいから、うまいな、勝てないなって正直思っていました。超えられなかった」
インタビューに答える勝昭氏この記事に関連する写真を見る
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