いとこの浩樹だからこそ知る井上尚弥の素顔。ドネアとの再戦秘話、珍しい出来事を明かした (3ページ目)

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

ドネア再戦で尚弥が見せていた自信

――ドネア選手との再戦に向けた、尚弥選手の様子はいかがでしたか?

「前日の計量からずっと一緒にいたんですが、計量後にご飯を食べている時から尚弥は自信満々な感じで、『けっこう早いラウンドで倒せると思う』と宣言していました。それが少し不安でしたね」

笑顔でインタビューに答える浩樹選手 photo by 立松尚積笑顔でインタビューに答える浩樹選手 photo by 立松尚積この記事に関連する写真を見る――それほどいい準備ができたからこその自信のようにも思いますが、どこに「不安」を感じたんですか?

「試合前にそこまで自信を口にすることは珍しいんです。いわゆる"入れ込みすぎ"の状態で『自信が空回りしなきゃいいけど......』と思っていました。前回の試合で、早い回に左フックをもらっていたこともありますから。

 試合では1ラウンドでダウンを奪いましたが、会場のボルテージと一緒に気持ちも昂って、決めにいってカウンターをもらうことを考えてしまって。『無理しないで』と思っていました。それも、尚弥にとっては杞憂でした。簡単に有言実行して倒しきってしまうあたり、さすがはPFP1位です(笑)」

――じわじわと追い詰めてからのフィニッシュシーンは、ワンツーでドネア選手をコーナーに押し込む形になり、そこから再度ワンツー、そしてスリーとつなげた左フックが最後のパンチになりました。

「最初に打ったワンツーの右のストレートは倒すことが目的ではなく、それをよけた相手の顔の位置を確かめたんじゃないかと思います。そこで、左フックで倒すイメージができた。ツーをしっかり打ち抜くと返しのフックが打ちづらくなりますし、タイミングも遅くなるので、次はツーのストレートを途中で止めてからスリーの左フックへとつなげていますよね。コンパクトで、完璧なコンビネーションでした」

――試合中の刹那に、そこまでの判断ができるものなんでしょうか。

「スパーリングで、実際の試合のさまざまな場面を想定しているからこそ、咄嗟に出せるんでしょうね。あのフィニッシュのタイミングも、練習で掴んでいたからこそ自然にできたんだと思います。

『倒せる』感覚があっても、それを実践できる力があってこそですけどね。尚弥は空振りしても体の軸がブレず、リングに根を張っているような感じ。練習でミットを持つとわかるんですが、どんな体勢からでも安定したパンチが打てるんです。こちらが急にタイミングを変えて、いきなり『ワンツー!』と入れても、必ず強いパンチがきますから」

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