いとこの浩樹だからこそ知る井上尚弥の素顔。ドネアとの再戦秘話、珍しい出来事を明かした (2ページ目)

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

――ジョンリル・カシメロ選手に繰り返し挑発されていた時には、尚弥選手が自身のTwitterで珍しく怒りを露わにする場面もありましたね。

「ただ、怒っている時の尚弥は本当に強いんですよ。相手選手へのリスペクトのほうが勝っちゃうと、強いことに変わりはないですが、少しだけ出力が落ちる印象があります。その反面、怒りを抱えて臨んだ試合では相手をあっという間に倒している。2019年のワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)の準決勝、スコットランドのグラスゴーで試合をした時もそうでしたね」

――それは、父親でトレーナーの真吾さんが相手の公開練習の偵察に行くも、制止されて相手陣営に突き飛ばされる騒動があった時ですね。試合では、エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を2ラウンド回1分19秒TKOで倒しました。

「あの時も怒りが噴火していた状態ですね。今年6月の(ノニト・)ドネア選手との2戦目は、ドネア選手への怒りはなかったと思いますが、1戦目の苦戦によって世間に好勝負を期待させてしまった"自分への怒り"が相当あったんでしょう。それが、あの2ラウンドでの圧勝劇につながったんだと思います」

――1ラウンドと2ラウンド間のインターバルで、尚弥選手はセコンド陣に「倒しにいかない」と話していたそうですね。ただ、結果としては2ラウンドで勝負を決めています。

「インターバルの時は、本当に倒しにいく気はなかったんだと思いますが、試合の中で『いける』と感じた瞬間があったんでしょうね。昔から尚弥には"野生の勘"みたいなものがあって、それを勝ちにつなげてしまう勝負強さも抜群です。普通は『いける』と思っても、『カウンターをもらうかもしれない』と警戒してしまうものですが、見事にフィニッシュしてしまうわけですから。

 尚弥はゲームでも勝負どころを見極めるのがうまくて、子供の頃にやっていた『遊☆戯☆王』などのカードゲームも強かったですね。あとは、ものすごく負けず嫌い。拓真と『ポケモン』で対戦をやっていた時に、『強すぎるから使わない』と決めていたモンスターを拓真が使ったことがあって。それに尚弥が激怒して、それ以来、2人でやっているところは見たことがありません(笑)」

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