2022.06.10

ケンコバが蝶野正洋に「ヒールの本性」を感じた不穏試合。武藤敬司と組んだIWGPタッグ戦で掟破りのパンチ攻撃

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • 山内猛●撮影 photo by Yamauchi Takeshi

ケンドーコバヤシ
令和に語り継ぎたいプロレス名勝負(4)前編

(連載第3回:ヒロ斎藤と渕正信の「流血の因縁」から学んだ。「男には、ベルトより大事なものがある」>>)

 子供の頃からあらゆる団体の試合を見続け、各メディアで"プロレス愛"を披露してきたケンドーコバヤシさんが、独自の目線で名勝負を語り尽くす連載。第4回は、武藤敬司とタッグを組んだ蝶野正洋が、"あり得ない"行動を取った試合を振り返る。

1990年8月、デストラクション・クルーと闘った蝶野(中央)と武藤(右)1990年8月、デストラクション・クルーと闘った蝶野(中央)と武藤(右) この記事に関連する写真を見る ***


――語り継ぎたい名勝負、今回はどの試合でしょうか。

「今回は"不穏試合"を紹介しようかと思います。プロレスファンの記憶に刻み込まれている名勝負はいくつもありますが、一方で『あの試合は、いったい何やったんや?』『今思えば、あの試合はヤバかったんちゃうか?』といった謎に満ちた試合もたくさんあって、ファンの心を捉えて離さないんです」

――この連載の第2回・後編で話した、「前田日明vsアンドレ・ザ・ジャイアント」は代表的な不穏試合ですね。

「そうですね。前田vsアンドレなどはこれまでいろんな人が語ってきましたが、俺の中で『これはあまり語られていないな』という試合があって。それは蝶野正洋の、唯一と言っていい不穏試合。蝶野正洋&武藤敬司vsデストラクション・クルー戦です」

――その試合は......すみません、すぐに思い出せず......。

「デストラクション・クルーは、ウェイン・ブルームとマイク・イーノスのタッグチーム名ですね。紹介したいのは、1990年8月19日に両国国技館で行なわれたIWGPタッグ戦です」

――思い出しました! デストラクション・クルーはAWA世界タッグを奪取した実力派のコンビで、金髪・ロン毛がトレードマークの2人でしたね。蝶野さん、武藤さんとの試合となれば盛り上がりそうですが......。

「蝶野さんと武藤さんは、当時の新日本プロレスの中でも海外マットに精通していた2人でした。武藤さんはアメリカ、蝶野さんはヨーロッパで活躍した経験を生かして、試合もショー的要素を多分に入れ、リング外のストーリーも丁寧に作っていた。ある意味この2人は、アントニオ猪木さんをはじめ、ストロングスタイルを貫いてきた新日本プロレスを大きく変えたと言っても過言ではないと思います。

 だから本来、武藤さんと蝶野さんは不穏試合をするイメージからかけ離れた存在なんです。しかも、蝶野さんが『狼群団』でヒールターンするのは4年くらいあとの話で、当時は白のロングタイツを履いた正統派のレスラーでした。ところが、この試合では、それまでの蝶野さんからすると"あり得ない"行動に出たんです」