パッキャオのような軽量級のスターに。京口紘人は完全アウェーのメキシコに乗り込んで「圧倒して勝つ」 (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AFP/アフロ

未知数のメキシコでの戦い

 京口の不安材料は、度重なる故障で2019年10月以降にわずか1戦しかこなしていないこと。それでも、武器の左拳がケガで使えない間に右パンチが向上するという"ケガの功名"もあったという。ベルムデスのほうも試合は1年以上ぶりであるため、前戦から間が空いたという点ではそれほど変わらない。

 全体の技術、大舞台での経験では京口が上回っており、スーパー王者は「(レベルの)差を見せたい」と断言している。相手の不用意な一発を浴びない限り、引き出しの多さで上回る京口が差をつけての判定か、終盤のストップ勝ちを飾るといった結果が妥当だろう。

 もっとも、これまで述べてきたのはすべて『順調にいけば』『通常どおりなら』の話であり、敵地での戦いはさまざまな意味で勝手が違うものだ。とりわけ今回の決戦の場は、多くの日本人選手が進出するようになったアメリカではなく、日本人世界王者が戦う上でのノウハウが豊富とはいえないメキシコだ。

 当初は標高約2200mのメキシコシティでの開催だったのが、約1500mのグアダラハラに変更になったのは好材料だが、ふだんよりも高地で戦うことに変わりはない。対策として京口は、低酸素状態を作り出すテントや高地トレーニングが可能な施設での練習をこなしているものの、実際にリング上でどう感じるかは未知数だろう。

 水、食事、練習場所などの準備が難しいことに加え、当日の会場はベルムデスに対する応援一色のはず。京口を抱えるマッチルーム傘下の興行とはいえ、完全アウェーの雰囲気のなかで適切な判定が下るかにも不安は残る。

「それは心配な部分ではあるんですが、自分のボクシングができれば大丈夫かな。(よりはっきりした差を見せる必要性は)感じています」

 京口自身は常に前向きだが、ふだんとは違う気遣いが必要な時点でやはり厳しい条件ではある。母国で戦えるベルムデスが想定以上の力を出す可能性も考慮すると、今回の試合が"試練の一戦"であることは間違いない。

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