K-1の「怪物」野杁正明が振り返る進化の過程。鉄壁ガードは「恐怖心」と「目の悪さ」ゆえに磨かれた (3ページ目)

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro
  • 立松尚積●写真 photo by Tatematsu Naozumi

【3階級制覇へのビジョンは?】

――ちなみに、視力はどのくらいなんですか?

「両目とも0.1以下ですね。0.07くらいかな? 試合の時もコンタクトはしているんですけど、すぐに取れちゃうんですよ。試合が終わる頃には両目ともコンタクトが外れていて、花道を通って帰る時も苦労します。

 花道は、トーナメントの決勝などであれば周りも明るいんですけど、1、2回戦とかだと真っ暗で階段が見えないことがあるので、たまに踏み外すこともあるんですよ(笑)。花道を歩いている時に、応援してくれた友人や知人を確認しようと思っても、全然どこにいるのかわからないんです」

――そんな状態で、あれだけ見事に打撃をさばいているとは......相手によって身長やリーチも違いますが、それもガードすることでわかるんですか?

「試合前に、相手の映像をさんざん見て下調べしますからね。たとえばアッパーひとつでも、距離を取って打つ選手、距離を取らない選手がいる。そういう癖を常に研究して、試合でその確認をしながら戦います。研究することが好きなので、後輩の選手から『次の相手と、どう戦ったらいいですか?』と聞かれることも多いです」

――KOできっちり勝つスタイルは、ふだんの練習から意識していますか?

「練習でミットを打つ時に心がけています。いろんな選手を見ていると、点と点で終わっている選手が多いように感じますね。練習、スパー、試合がつながっていないというか。僕はそれらを線でつなげられるように、試合で相手を倒すことを意識しながら練習やスパーなどをやっています」

――2階級を制覇して、さらに階級に上げるビジョンもあるんですか?

「今のスーパー・ウェルター級(-70kg)は日本人選手が少ないですし、すぐに上がるかと言われたら、そうはならないと思います。コロナ禍で外国人選手を呼べない状態ですから、国内の選手が少ないと少し厳しい。

 昔みたいに、マラット・グレゴリアン(初代スーパー・ウェルター級王者)だったり、チンギス・アラゾフ(第2代の同階級王者)などがチャンピオンになった時は夢がありましたね。あと、僕はK-1MAXで魔裟斗さんを見て育ってきた世代なので、魔裟斗さんが現役の時代であれば挑戦したいなっていう気持ちも出てきたでしょうけど(当時のミドル級は、現在のスーパー・ウェルター級と同階級にあたる)。

 とにかく今はウェルター級で、強い選手を相手に防衛を重ねていくことに集中したいです」

(後編:武尊vs那須川天心が予定の大会には「同じ舞台で試合を」>>)

■野杁正明(のいり・まさあき)
1993年5月11日生まれ、愛知県出身。身長175cm。小学2年から空手を始め、中学2年でキックボクシングに転向。高校1年でK-1甲子園2009を制し、翌年にプロデビューを果たす。プロでの戦績は46勝10敗22KO だが、特に2016年8月以降は17勝1敗と勝利数が大幅に増えた。2017年6月にスーパー・ライト級を制し、2021年9月に2階級制覇となるウェルター級王者になって同年のMVPに選出された。
公式Twitter>> @noirimasaaki_k1 公式Instagram>> nm_k1

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