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「何もしないで勝つ」。柔道・高藤直寿は金メダルのために自らのスタイルを変えた (4ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by JMPA

 パリ五輪では、欧州の選手が強みを発揮してくると予想される。とりわけ開催国のフランスは柔道が人気で、非常に強く、東京五輪の混合団体決勝では日本を破って金メダルを獲得した。

「僕は混合団体に出ていなかったんですけど、すごく悔しかった。次はパリなので、フランスをぼっこぼこにしてやろうという気持ちになりました(笑)。フランスは強いですけど、僕はグランドスラム・パリで4回優勝しているほどパリとの相性がよく、むしろやりやすい。盛り上がりも他国とは全然違って熱いので、それを五輪の舞台で味わえたら最高ですね」

 フランスは柔道を含め、格闘技を見る目が肥えている。自国の選手の応援はもちろん、海外の選手が自国の選手を倒してもいい技が出ると盛り上がり、賞賛してくれる。

 そのパリを熱くさせるためには、高藤らしい勝利が求められる。

「東京五輪までのスタイルを変えて進化していかないと、すぐに分析されて対応されるのでパリまで生き残れない。3年後の完成形を目指すと周囲がその先にいく可能性があるので、その都度、自分の柔道を変えていって出来上がったものが完成形になると思います。ただ、パリでは投げて勝ちたいという気持ちがあるので、攻略本に少し投げをとり入れていきたいですね」

 東京五輪では勝つことに徹し、「何もしないで勝つ」というスタイルで金メダルを勝ち獲った。同じことを繰り返して勝てるほど世界は甘くなく、柔道家としての矜持もある。

 高藤といえば、「豪快に投げて勝つ」なのだ。

 次のパリ五輪では自分本来の投げの要素を取り入れて進化させていく。その取り組みは、メダル獲得同様に価値のあるトライになる。

「3年間、無敗で連覇したいですね。その権利があるのが今回の金メダリストだけなので」

 パリでは、どんな新しい柔道のスタイルを見せてくれるだろうか。世界は間違いなく注目するだろうし、SNSをまたざわつかせそうだ。「高藤、また変わった!」と──。 

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毎週日曜日 15:30〜16:00

スポーツジャーナリスト・佐藤俊とモリタニブンペイが、毎回、旬なアスリートにインタビューするスポーツドキュメンタリー。
強みは機動力と取材力。長年、野球、サッカー、バスケットボール、陸上、水泳、卓球など幅広く取材を続けてきた二人のノウハウと人脈を生かし、スポーツの本質に迫ります。
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