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「幻の金メダリスト」が義足で再デビュー。谷津嘉章の新たな野望 (3ページ目)

  • 井木 康文 ●取材・文 text by Iki Yasufumi
  • photo by DDTプロレスリング

パラリンピックの種目にレスリングを。狙うは金メダル

 前例のないことに挑む谷津はさらなるビッグプランがあることを打ち明けた。

「義足レスラーとしてしっかりとプロレスをすることが今の目標ですが、その次の目標もあるんです。それはレスリングをパラリンピック種目にすることです。レスリングはハードコンタクトなので、パラリンピック種目にするためにハードルが高いことは想像がつきます。しかし、だからこそチャレンジをする意味があるのかなと。そしてそのチャレンジをするのは、元五輪選手であり義足である自分しかいないのではないのかと思うんです」

 義足になっても大きな夢を持ち続ける姿勢は、まさに『義足の青春』という自身のYouTubeチャンネルのタイトルそのものであった。

「後輩の馳(浩)先生※にもご協力頂いたりして、持てる力を尽くせばパラリンピック種目の実現はあるかもしれません。そして、パラリンピック種目になった最初の大会で谷津が金メダルを獲れば夢がありますよね?1976年のモントリオール五輪では獲得できず、1980年のモスクワ五輪は幻となってしまった谷津が、何十年以上の時を超えてパラリンピックで金メダルを獲ったぞ!となれば、世界の誰かの背中を押すことができるのかなと思います」

※自由民主党所属の衆議院議員。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問会議の顧問。ロサンゼルスオリンピックにレスリング日本代表として出場。1985年にジャパンプロレス入団し、翌86年にデビュー。06年に引退後するも17年に復帰、今もスポット参戦をしている。

「五輪を目指していた自分は、今も目標を作ってそれに向けて動くようにしています。逆に目標がないと動けないんですよ」

 義足での再デビューという高いハードルのその先に、さらに大きな目標を掲げるのはアスリート精神がそうさせる。

「パラリンピックでの金メダルを果たすためにも、義足レスラーとしてしっかりとデビュー戦で活躍しないといけないんです。今はそこに全力で集中しています。デビュー戦はバトルロワイアル形式ですが、やはり最終的にはシングルマッチで戦いたいと思っています。義足を使ったプロレスというのは、今まで誰も見たことのない戦い方ですので、不安もありますがワクワクが大きいです」

 幻のモスクワ五輪から41年。谷津は3月末に聖火ランナーを務めることになり、これは新型コロナウイルス感染拡大でまたも幻となりかけたが、無事に走ることが叶った。何かとオリンピックイヤーと縁がある谷津嘉章から、今年は特に目が離せない。

谷津 嘉章(やつ よしあき)
1956年7月19日生まれ。群馬県明和町出身。日大時代からレスリングで名を上げ、76年モントリオール五輪に出場。80年モスクワ五輪では金メダル候補とされたが、日本が参加をボイコット。同年に新日本プロレスへ入団し、12月ニューヨークにてデビュー。新日本、全日本のメジャー団体からインディ団体まで幅広く参戦し活躍。総合格闘技のPRIDEにも参戦した。2010年11月に引退。2019年6月に糖尿病の合併症により右ヒザ下を切断した。

谷津嘉章の再デビュー戦も行われる『CyberFight Festival 2021』は、6月6日に埼玉・さいたまスーパーアリーナにて開催。
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