山本美憂が振り返る「KIDvs魔裟斗」とその裏側。試合後の弟の涙に悔しさがこみ上げた (3ページ目)

  • 瀬川泰祐●取材・文・撮影 text by Segawa Taisuke

――山本ファミリーの絆が垣間見えるシーンだったと記憶しています。結果は魔裟斗さんの判定勝ち。試合後、KIDさんに何か声をかけましたか?

山本「お疲れ」って感じで声をかけただけだったと思います。試合後の控室で、ノリはしばらくタオルを被ったままうつむいていました。そこでタオルの中をチラッと覗いたら、目を真っ赤にして泣いていたんですよ。その姿を見た時に、わたしにも悔しさがこみ上げてきました。

――後日などに、試合の内容について話をしましたか?

山本 何も話してないです。本人も話したくなかったと思うので。試合後も、本人が話しかけてくるまで待つようにしていました。幼い頃から、家族とたくさん話すという感じでもなかったですしね。

――信頼関係があるからこそ、言葉も少なかったのかもしれませんね。その後、美憂さんも総合格闘技の世界に入り、KIDさんから指導を受けました。弟から指導を受けることで、気を遣うことはなかったですか?

山本 気を遣うというより、怖かったです。弟という感覚はなく、鬼コーチみたいな感じでした。常に泣かされていましたし(笑)。

――家族だから、あえて厳しくしていたのでしょうか?

山本 そうだと思います。姉である私ができないことが、悔しくて歯がゆくて、余計にキツくなっていたんだと思います。わたしは総合格闘技デビューが41歳と遅かったんですが、初戦から大きな舞台で試合させてもらうことが決まっていたので、「ちゃんと試合をさせないといけない」という責任感が強かったのだと思います。

 プロ意識というか、「どうしようもないヤツをリングにあげるわけにはいかない」という心意気でしょうね。それでも、私の持っている力を信じてくれていたので、そこをどうにか活かそうと一生懸命に指導してくれていました。

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