東京五輪金メダルを目指す柔道・
阿部兄妹。詩から一二三にエール

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nishimura Naoki/AFLO SPORT

 8月25日から東京・武道館で開催されている世界柔道選手権2日目。男子66kg級と女子52kg級に出場し、2大会連続の兄妹優勝を狙った阿部一二三(日体大)と阿部詩(日体大)の明暗が分かれた。

東京五輪出場へ、一歩リードした阿部詩東京五輪出場へ、一歩リードした阿部詩"明"は詩。キレのある動きで初戦と2試合目を隅落としと大外刈りで一本勝ちすると、準々決勝の対チェルシー・ジャイルズ(イギリス)戦は互いに技を出せない展開が続いて4分間フルに戦ったが、残り33秒に大内刈りで技ありを取って危なげなく勝ち上がった。

 準決勝で対戦したのは16年リオデジャネイロ五輪優勝のマイリンダ・ケルメンディ(コソボ)。この大会最大の難敵と想定していた相手だ。一発があるうえに、釣手で背中を取って相手の動きを制御する独特のスタイルの選手だ。

「ケルメンディ選手との戦い方を考えて練習してきたので、あまり怖さはなかった。本当に粘り強く、粘り強く、隙があったら狙おうと思って試合をしていた」と言う詩は、序盤はうまくしのぎ、開始1分45秒までに「故意に取り組まない」の指導を2回出させ、もう1回出れば反則勝ちとなるところまでこぎつけた。

 だが、ケルメンディはそこからがしぶとかった。詩の攻撃をしのいでゴールデンスコア(GS)の延長戦に入ると、しっかり背中を取る組手に持ち込んで1分58秒に指導を取った。詩は序盤に出されていた指導に加えて2回目。条件が同じになった。

「最初に相手に2枚の指導が出た時はいけるぞと思ってGSに入ったんですが、自分の組手の技術不足で指導を取られてしまった。もう技で決めるしかないと思った」

 そう話す詩は、延長2分50秒で技を仕掛けると、互いに倒れたところを見逃さずに寝技を狙い、横四方固めで抑え込んで一本を取って勝利した。

「最後は隙を見て寝技という形でしたが、練習してきたことを出して勝てたのはよかった」

 最大の難敵を破った詩は、決勝でベテランのナタリア・クジュティナ(ロシア)に鮮やかに勝ち切った。「最後まで自分の柔道を出し切ろうと思い、あまり緊張はしていなかった。残った体力もあまりない状態だったので、絶対に得意な袖釣り込み腰で決めてやろうと考えていた」と振り返るように、開始30秒で一本勝ちをおさめた。

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