東京五輪金メダルを目指す柔道・阿部兄妹。詩から一二三にエール (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nishimura Naoki/AFLO SPORT

 その後、一二三は3位決定戦で延長のGSに入る戦いになったが、最後は釣り腰で一本を取ってメダルを死守。丸山は痛み止めを飲んで左ひざをテーピングで固めた状態で決勝に臨み、開始2分52秒に得意の内股で技あり、残り29秒に腰車で技ありを取り、合わせ技一本で優勝を決めた。

 東京五輪代表争いは、世界選手権連覇の実績を持つ一二三を、直接対決3連勝と世界選手権初制覇で丸山が一歩リードする形になった。だが、井上監督は「まだ完全に甲乙を付けられる状況ではない」と話す。

「ふたりとも死闘を繰り広げたあとでキツさもあったはず。その中で丸山はひざを痛めながらも一番重要な大会で勝ち切ったことは評価できるし、これまでの悔しさを爆発させた結果だと思う。一方の阿部(一二三)も、万全な準備ができなかった状態で、目も腫れて視野も狭くなって痛みもある中で、最後まであきらめずに3位決定戦で勝った。今回は来年の東京五輪に出てくるだろう選手がみんな出ていましたが、その中でふたりは世界1位、2位の実力を証明してくれた」

 詩は一二三に、「お兄ちゃんと一緒に優勝できなかったのは残念ですが、3位になってもまだまだ(東京への)道はあると思うので。あきらめずにやって、また引っ張ってもらえる存在になってほしい」と話す。

 東京五輪の舞台に兄妹で上がることはできるのか。まだまだ熾烈な戦いは続く。

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