「俺のような柔道家になってほしい」。小川直也が息子・雄勢に託す夢
【小川直也が見る日本柔道 後編】
小川道場のエントランスを入ってすぐの場所に、1本の優勝旗が立てられていた。春先に開催される東京都選手権(全日本選手権の予選も兼ねる歴史ある大会)を制した者に贈られるその優勝旗には、「小川直也」の名と共に、今年の東京都選手権を制した、彼の長男である「小川雄勢」の名も加わった。
東京都選手権を制した、長男・雄勢を祝福する小川直也 現在、明治大学の3年生である雄勢は、100kg超級のホープとして期待を集める選手であり、バルセロナ五輪で銀メダルに終わった父の悲願を背負う。
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──長男の雄勢選手が同じ道を歩むことは、父親として、柔道家として嬉しいのではないですか?
「そりゃあね。頑張っていると思いますよ」
──身長が190cmで、体格も父親譲りです。同じ左組みで、上から奥襟を掴んで戦う柔道スタイルも似ていますよね。
「俺は左利きの左組みなんだけど、雄勢は本来、右利き。右利きの左組みとは、根本的に柔道は違うんですよ。俺自身が『左組みにしろ』と言ったことはないし、雄勢があえて左を選んだ」
──父親の柔道スタイルに倣いたいという気持ちがあるんでしょう。
「どうなんだろうね。でも、雄勢をかわいそうに思うこともあるんですよ」
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