甘酸っぱい銅メダル。野獣・松本薫が語った「リオ五輪の悔恨」

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by JMPA

「金に同じ」と書く銅メダルといっても、五輪に出場する柔道家にとっては、金メダルとはまるで意味の違うものだ。前回のロンドン五輪で、日本勢として唯一の金メダリストとなった女子57kg級の松本薫(ベネシード)であればなおさらだろう。

準決勝で敗れ、2大会連続の金メダルを逃した松本薫準決勝で敗れ、2大会連続の金メダルを逃した松本薫  初日、2日目に出場した4選手がいずれも準決勝までに敗れる流れを、松本は食い止められなかった。準決勝の開始24秒、一瞬の隙を、モンゴルのドルジスレン・スミヤに狙われた。

「相手が最初に背負い投げに入ったときに、全然だったから大丈夫と思ってしまって......。その一瞬の気の緩みのせいで、2回目の背負い投げに対応できなかったんだと思います。ストンと入ってしまった。今まで彼女と対戦したときは、1回しか、自分の調子が本当に悪かった1試合しか負けていなかった。どこか勝てると思い込んでしまっていたんだと思います」

 松本は初戦の2回戦から"野獣"モード全快だった。眉毛と目を鋭い「への字」にして前方を凝視し、「オリンピックチャンピオン!」の場内アナウンスとともに、畳に上がっていった。

 コートジボアールの選手を視線の先にとらえたら、厳しい表情で「一本」を奪うまで技を仕掛け続ける。寝業で下になった状態から、腕を決めて体勢を入れ替えるオモプラッタというブラジリアン柔術の技で抑え込み、「一本」勝ち。もともとロンドンの頃から寝業を得意としていたが、柔術の技で勝ち上がるところに、彼女の4年間の成長を見た。

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