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内山高志と交わした約束。
僕は「ヒーロー」を信じている (5ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro  photo by AFLO

 何年も前から、内山に夢を訊ねると、「ラスベガスのリングで、強い相手と戦うこと」とブレることはなかった。夢半ばなのは間違いない。しかし、36歳という年齢、途絶えた連続防衛記録、遠ざかりそうなラスベガスでのビッグマッチ......。そのモチベーションを維持することは、かぎりなく難しい。

 内山は所属するワタナベジムの渡辺均会長に、「しばらく休みます」とメールを送っている。その"しばらく"が、もしも永遠となってしまっても、誰も内山を批判しないだろう。内山の積み上げた記録や記憶は、一度の敗北などで少しも陰ることはないからだ。内山が今後下すどんな決断も、多くのファンはきっと納得するはず。

 それでも期待してしまう。"ヒーロー"は願ったときに現れる。そして、内山本人だけでない、ファンもが願った結末を用意してくれるはずだ、と。

 最後に、個人的な事柄で申し訳ないが、いつか内山高志と交わした会話を記しておきたい。

「ラスベガス、連れて行ってください」
「はい」

 その瞬間、こちらの目を真っ直ぐに見ながら内山は答えた。

 あの約束の有効期限は、まだ切れていないと信じている。なぜなら、"ヒーロー"は、決して嘘をつかないからだ。

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