山中慎介の「神の左」は、どうして避けられないのか? (4ページ目)

  • 原 功●取材・文 text by Hara Isao  photo by AFLO

 そうやって打ち込む左ストレートだが、実は山中の左は踏み込みと同時に肩から真っ直ぐに伸び、当たる瞬間に拳を少し内側に捻り込む「コークスクリューパンチ」になっている。パンチに回転がかかる分、命中した瞬間、相手に与えるダメージはより甚大となるわけだ。山中自身は、「コークスクリューになっていると言われるんですが、自分では無意識なんです。ただ、最後に人差し指と中指の付け根を当てるようにしているので、そのために(拳に)回転がかかるんじゃないですかね。それに、相手のパンチは当たらないけれど、こちらのパンチは当たるという特別の距離感があるんです」と解析している。それが、「神の左」の正体ということかもしれない。

 山中は、「通信簿でいえば左ストレートだけ【5】で、ほかの右フックとかアッパーは【1】とか【2】ですよ」と笑うが、もちろんそれは自己過小評価というものだ。V7戦となったスリヤン戦では右ジャブがしっかり機能していたし、いつの試合でも足でつくる間合いは巧妙だ。

 また、ハイペースで12ラウンドを戦い抜くスタミナや、精神的なタフネスも身に着けている。下半身の強靭さも見落としてはなるまい。「パンチは上半身で力任せに打つものではなく、下半身でエネルギーをつくって打つもの。下半身強化には力を入れています」と山中は話す。

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