【ボクシング】史上最速V。「怪物」井上尚弥が背負っているリスク
4月6日、東京都大田区総合体育館で行なわれたWBC世界ライトフライ級タイトルマッチを予備知識のないまま見たならば、20歳の日本人がチャンピオンだと思ったのではないだろうか。ある程度の予想はしていたものの、井上尚弥(大橋ジム)が見せた日本人最速となるプロ6戦目での戴冠劇は、予想をはるかに上回る次元の圧倒的なKO勝ちだった。「イノウエは強かった」。試合内容は、敗れたアドリアン・エルナンデス(28歳・メキシコ)も舌を巻くほどだった。エルナンデスは1年6ヵ月前の2012年10月6日にWBC王者となったのだが、その4日前にプロデビューした選手(井上)に王座を明け渡すことになるとは思いもしなかったことだろう。
日本人最速となるプロ6戦目で世界王座を奪取した井上尚弥 あまりのワンサイドゲームだったために、「弱いチャンピオンを連れてきたのではないか?」という疑問の声があるかもしれないが、それは完全否定しておかねばならない。エルナンデスはプロキャリア8年、32戦29勝(18KO)2敗1分の戦績を残している軽量級きっての強打者である。接近してからの攻撃力には定評があり、数々のトップ選手をその拳で粉砕し、アメリカ大陸王座、北米王座などを獲得後、26歳で世界の頂点に駆け上がった。世界戦の数だけでも、井上の全試合数を上回る8戦(7勝5KO1敗)を経験している。今回の試合まで4度の防衛を重ねているように、その実力はチャンピオンとして十分なものである。
井上はそんな相手に立ち向かったわけだが、海外のオンライン・カジノの戦前オッズ(賭け率)は、なんと6対1で「井上有利」と出ていた。すでに井上の評価は、海外でも極めて高かったのである。
1 / 3