検索

【男子バレー】山本智大は厳しく評価されるリベロのポジションで美学を貫く 小川智大との切磋琢磨は継続 (3ページ目)

  • 田中夕子●取材・文 text by Tanaka Yuko

【「新しい挑戦をしている実感がある」】

 そのなかで、レシーブがうまくいかなくても、攻撃面でフォローすることでバランスがとれるアタッカーと異なり、リベロはミスが許されず、攻撃で挽回することはできない。隣の選手をフォローしたために守備位置が広がった結果、逆を突かれてサービスエースを取られた1本だったとしても、リベロが取れなければ、「リベロなのに」という目が向けられる。

 縁の下の力持ちでありながらも、厳しい評価を下されることが多いリベロ。そんなポジションの面白さを自らのプレーで見せてきたのが山本であり、共に切磋琢磨してきた小川智大でもある。世界にも名を轟かせる日本が誇るリベロの存在は、バレーボールの楽しみがディフェンスにもあることを、何度も何度も印象づけてきた。

 当然、それだけ厳しい戦いが続けば、心身ともに疲弊する。ロラン・ティリ新監督のもと始動した日本代表で、山本や石川祐希、髙橋藍、小野寺太志といったパリ五輪を戦った選手たちは、ネーションズリーグが始まってから合流。信頼関係の現れとも言えるが、大会終盤に合流してから本来の力を発揮するのは容易ではない。小川はネーションズリーグの大半に出場し、世界選手権のトルコ戦とカナダ戦にも出場したが、ストレートで敗れ、予選敗退という屈辱も味わった。

 それからまだ1カ月半、日本代表では厳しいシーズンを過ごした山本が、SVリーグ開幕戦でようやく本来のパフォーマンスを披露し、何より楽しそうにプレーしていた。満員の観衆のなかでも声が響き、レシーブが得点につながれば大きなアクションで喜びを表現した。

「(ブルテオンの)監督も代わって、(新監督のトーマス・)サムエルボさんは誰に対しても同じように接して、同じように怒る。その結果、チームが同じ方向に向かっているのを感じるし、新しい挑戦をしている実感があるので楽しい。もちろん"優勝"という目標はありますけど、そこだけを見すぎず、目の前の試合を楽しみながら成長していきたいです」

 そう語った山本だけでなく、個々やチームがどんな変化を遂げていくのか。長く、熱く、楽しいシーズンが始まった。

3 / 3

キーワード

このページのトップに戻る