【男子バレー】髙橋藍「ロス五輪への1年目? 関係ない」無類の負けず嫌いが「敗退」を語る (3ページ目)
3セット目も、髙橋は8-8に追いつくブロックタッチのスパイクを決め、9-8と逆転する得点の契機を作るサーブも打っている。再び逆転されたが、フェイクセットで宮浦健人の一撃をアシスト。緊迫した状況での創造的プレーは、彼の真骨頂だった。
しかし、チームはすぐに流れを手放してしまった。
日本が世界5位にランクされる実力やアジアでの人気にあぐらをかいていたわけではなかっただろう。特別、士気が低かったわけでもない。
「ロス五輪に向けた1年目」
そんな大義もあった。ただその分、目の前の切迫感を欠いていなかったか。
――パリオリンピック後、代表の1年目で"これから作っていく"というムードだったのでしょうか?
質問をぶつけると、髙橋は少し考えながら答えた。
「それぞれ考え方はあると思うんですが......自分は、そこは関係ないなって。日本代表としての責任、覚悟は常に持っているべきもので、コートに立って戦っていると、調子のいい悪いは出ますけど、そのなかでも100%の力を出し、"チームが勝つため"に戦えないと」
カナダ戦の髙橋は"勝負の天才"ぶりをあらためて披露した。相手が動揺する姿も見抜き、自らが潮目になっていた。吹っ切れた彼は希望だった......。
「今回の負けを忘れず、まずは"予選通過も難しい"という事実を受け止めて」
自他ともに認める無類の負けず嫌いが、「敗北を受け止める」と言う。捲土重来。王者になるための順序だ。
17日の世界バレー最後のリビア戦が、1年目の集大成となる。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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