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【SVリーグ男子】髙橋藍が見せた「怒り」の表情 決勝は「我慢しながら集中して......」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【やるべきことは「まずディフェンス」】

 ウルフドッグスとの第2戦、第3戦、髙橋のプレーは鋭気に満ちていた。体内を暴れ回る怒りを飼い慣らし、自分の力に変えているようだった。たとえばバックアタックは勇壮でダイナミックだったし、空中で相手ディフェンスの構造を見極めながら、空いたコースへ打ち分ける芸当は神業的だった。創造力も喚起されたのか、トリッキーな背面ショットも飛び出した。

「サンバーズはディマ(ドミトリー・ムセルスキー)やオレク(アレクサンデル・シリフカ)やAJ(デアルマス・アライン)など得点を取れる選手が多く揃っているので。自分がやるべきことは、まずはディフェンスのところ。それに加えて、パイプ攻撃(前衛をおとりにして後衛の選手がバックアタックを打つ)だとかを要所で混ぜて、チームがほしい1点を取れるようにしたいです」

 髙橋はそう言うが、特に3試合目は攻守に八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍だった。アタック決定率は65.4%、サーブレシーブ率は59.6%。POM(プレーヤー・オブ・ザ・マッチ)受賞も当然の数字だ。

「2セット目からギアを上げられたので、スパイク決定率も高い数字は残せた。自分自身、ディフェンスをチームの軸としてやっているし、リベロとふたり、パスで安定感は出せたかなと。(攻撃は)身長が高いわけではないので、パワーだけでは難しく、うまさで戦っていかないといけない。難しい状況でも頭を使って工夫して取っていく、取りに行くべきところは強打も意識して......」

 頭のなかをクリアに集中した状態が、創意工夫を生み出した。その点、彼は"集中力の天才"と言える。実際のところ、1試合目の彼の怒りは、不甲斐ないチームに対してでもおかしくなかった。自身のサーブやサーブレシーブはやや不調だったが、スパイクは24得点でムセルスキーの25得点の次に多く、決定率も66.7%だった。それでも、彼は自分にだけ怒れるのだ。

 STINGSとのファイナルでも、その存在はチームの生命線になるだろう。

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