パリオリンピック男子バレー 西田有志は「全部結果論。自分は納得できます」と言って虚空を睨んだ (2ページ目)

  • 小宮良之●text by Komiya Yoshiyuki

【「自由さを出せるのが強み」】

 ベスト8に終わったパリオリンピック男子バレーボールで、西田はMVPに値する活躍ぶりだったと言える。

 ドイツ戦は石川祐希に次ぐ20得点だった。サービスエースはチーム最多3本、実力だけでなくピーキングにも成功していた。アルゼンチン戦は最多21得点で、5本のエースを記録。アメリカ戦はやや不調なチームのなか、ひとり気を吐いて最多18得点だった。敗れはしたが、準々決勝進出を確定させた3セット目は、破竹の勢いを感じさせた。

 そしてイタリア戦も、西田は石川に次ぐ最多22得点だった。激戦となった3セット目、技巧的なフェイントで得点したかと思えば、大砲のような一発も決めた。また、サーブではレシーバーを吹き飛ばすような勢いのボールを打ち込んで、仁王立ちとなっている。

「自分は一歩引いて、楽に考えるわけじゃないけど、自由さを出せるのが強み」

 西田はその矜持を語り、プレーヤーとしても体現していた。

 何気ない風景があった。1セット目が終わったあと、ベンチで立ったままバナナをむんずと掴み、皮をむき、むしゃむしゃと食べる。そのシーンひとつ切り取っても、自然だった。食べ方が野生的なのに、品すら感じさせた。一挙手一投足に愛嬌があって、憎めない。コートにいる間は、100%バレーボール選手として自由闊達に生きているのだ。

 今年5月、ナショナルトレーニングセンターで写真撮影があるなか、西田は石川と髙橋藍に向かって、「『怪獣8号』の続きが見たい!」と話していたことがあった。ふだんチームメイトと接する彼は和気藹々として、笑いが絶えない。

『怪獣8号』は人間が怪獣に変身してしまう漫画原作のアニメだが、彼もコートで変身するようなところがあった。変身後、彼は超人のようになった。パリではその姿で人々に夢を見させた。敗北で終わったが、心は揺さぶった。

「自分たちのなかで、この内容で負けてしまって、試合の流れもあったと思いますけど......チーム全員がやるべきことをやっていたし、全員が100%の準備をして、戦うことができました。まだ頭が整理できていないですけど、このレベルになってくると(戦いがどう転ぶかは)わからないものだし、日本人がこのレベルまできた、ということだと思います」

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