パリオリンピック女子バレー ブラジル戦完敗の現場で古賀紗理那は感情を抑えるように語った (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 スタッフがユニフォームのままの古賀の肩に、そっと上着を乗せた。彼女がそれに小さな声で礼を言う。取材エリアはコートよりも冷えていた。質疑応答は長くは続かなかった。

 最後に眞鍋政義監督が取材エリアに現れた。

「ブラジルの集中力がすごくて、我々のサーブではまるで崩れませんでした。(ネーションズリーグと)反対の結果ですね」

 眞鍋監督は、「集中力」という言葉でブラジルの強さを表現し、「身長が低い」という言葉も何度か使った。

「我々(の選手たち)は身長が低いものですから、サーブで崩し、ブロック、もしくはディフェンスを上げていかないと、どこと試合するのも苦しいです。(勝利した)ネーションズリーグとはまったく違いますね。ブラジルの"オリンピックの執念"はすごいというのは毎回、感じます。ただ、いいところも出ましたので、(予選)最終戦はどうなるかわかりませんですが、今まで練習してきたことを出したいです」

 連敗のショックがずしりとのしかかる。なかなか光明を見出せない状況だった。4年に1度の戦いに、彼女たちはすべてを懸けてきたのだ。

 8月3日、日本は準々決勝進出をかけ、ケニアとの一戦に挑む。勝利が最低条件で、セット数で順位づけされる(各グループの1、2位と、3位のうち上位2チームが準々決勝へ進出)。自力での突破はなくなったが、一縷の望みにかける。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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