石川祐希が日本代表で得た「濃い経験」 全員が「この1点をもぎ取る力をつけようと思ったはず」 (3ページ目)

  • 柄谷雅紀●取材・文 text by karaya masaki
  • Photo by FIVB

【昨年の世界選手権は、経験の"濃さ"が違った】

――少し前の話にはなりますが、日本代表についても伺います。去年の世界選手権は決勝トーナメントの初戦で、東京五輪覇者のフランスにフルセットの大激戦。最終セットは先にセットポイントを握りながら競り負けました。振り返ると、どういう経験になっていますか?

「もちろん悔しいですが、世界選手権後に日本代表が変わっていくためには非常に大事な一戦でした。たぶん、今まではひとり、多くても複数人が悔しいと思う試合はあったでしょうが、あのフランス戦の負けは全員が悔しいと思ったはず。全員が責任を感じられた試合だったと思うので、成長につながる大会だったと思います」

――日本代表がもっと強くなっていけるという可能性が見えた試合でしたか?

「『この1点を取るか取らないか』で、結果がまったく違う世界を見たことが大きかったと思います。だからこそ、その1点をもぎとる力を全員がつけようと思えたはずです。先ほども言いましたが、全員が責任を感じたということが一番大きいと、個人的は感じますね。

 僕の場合は、最後の場面で回ってきたサーブ。西田有志選手は、最後のスパイクが拾われたこと。山内晶大選手や小野寺太志選手は、リードしたところでクイックを決めきれなかったこと。関田誠大選手は、そのクイックを中途半端にアタッカーに打たせてしまったこと。髙橋藍選手は、最後にフランスのヌガペトにスパイクを決められた場面で『ブロックに行くか行かないか』で迷い、行かなかったこと。

 それぞれが、『あそこで、こうしなければいけなかった』と考えていると思うので、それが今後につながるはず。きっと、みんながそのことを頭の片隅に置きながらシーズンを戦っていると思います。そういう経験は今までなかったですし、五輪王者に勝てそうなチャンスもありませんでした。そのレベルにたどり着けているけど、勝ちきれなかった。そんな手応えと悔しさをみんなが感じたはずです」

――東京五輪の準々決勝で敗れたブラジル戦もすごく悔しかったと思いますが、世界選手権のフランス戦はまた違う経験でしたか?

「経験の"濃さ"が違うと思います。東京五輪は、熱量はすごかったですけど、世界選手権はあと1点で勝てていた。五輪の時点ではそこまでの戦いはできていなかったので、そう考えると、経験したものは世界選手権のほうが濃かったと思います」

(vol.3:「本当にあと一歩」だったプレーオフ準決勝敗退に感じた手応え 3位決定戦へ「もっとチームを助けたい」>>)

【プロフィール】

◆石川祐希(いしかわ・ゆうき)

1995年12月11日生まれ、愛知県出身。イタリア・セリエAのミラノ所属。星城高校時代に2年連続で三冠(インターハイ・国体・春高バレー)を達成。2014年、中央大学1年時に日本代表に選出され、同年9月に代表デビューを飾った。大学在学中から短期派遣でセリエAでもプレーし、卒業後の2018-2019シーズンからプロ選手として同リーグで活躍。2021年には日本代表のキャプテンとして東京五輪に出場。29年ぶりの決勝トーナメント出場を果たした。

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