若手の美人バレー選手として「客寄せパンダ」にされた齋藤真由美。同じく苦しんだ益子直美と取り組む「怒らない指導」 (4ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari
  • 松永光希●撮影 photo by Matsunaga Koki

――監督が怒らない指導は、他のスポーツにも広がっていますね。

「そうですね。でも、過去に厳しい指導をしていた方たちは、『自分たちが批判されている』という感情になってしまうことがあります。厳しい指導者のもとで結果を出したアスリートも多いですから、『厳しい練習をしてきた私たちも含めて否定されている気分になる』と言われたこともありました。

 それでもマコさんはそこで勇気をもって、『監督が怒ってはいけない』というインパクトのある言葉で、子どもたちを守るために活動を続けてきた。マコさんひとりでは活動の維持が厳しい部分もあるので、さまざまな方の支援もあって2021年4月に『監督が怒ってはいけない大会』という名前の会社が設立されました(益子直美が代表理事)。

 マコさんの最終目標は『日本に怒る指導の文化はもうない。益子直美はもういらない』と言われること。賛同していただけることも少しずつ増えていますが、私の役割はパートナーアスリートとして批判を受け入れることです。マコさんが幸せな気持ちで子どもたちと関わっている姿を見るのが目的なので、それ以外のすべてはすべて私が引き受ける覚悟をしています」

現在の活動について笑顔で語った photo by Matsunaga Koki現在の活動について笑顔で語った photo by Matsunaga Kokiこの記事に関連する写真を見る――福岡での開催が多いですが、昨年11月の大会は初めて秋田で行なわれましたね。

「法人化して1回目の大会で、私も行ってきました。さらに、パイオニア時代に本拠地としてお世話になった山形県・酒田市(2014年5月まで)でも賛同していただいて、同じような大会を開催するという話になって。大会を見させていただいたらすばらしい内容だったので、来年以降は正式にあと押しできるように、マコさんと一緒に現地に行けたらと思います」

――着実に一歩ずつ、活動が広まっていますね。

「厳しい指導をしていた方たちは、現役時代に同じような指導を受けていたことが多いと思います。私は勉強中ですが、励まし方がわからない方がいるのも当然のことだと思います。『厳しいことを言ってしまった』と反省して悩んでも、励まされた経験がなく、その代わりとなる言葉が見つからないから『怒ったほうがラクだ』という思考になってしまうこともあるでしょうね。

 そうなると子どもたちも、怒られることを『はいはい』と受け流すようになる。それでは個性が生かされないし、何かの選択をする時に自分の思考が働かなくなってしまいます。今までやってきたことを変える、新しいことを始めることはすごく労力と勇気がいること。それでも、怒る指導をしてしまう方は、自分がかつて負った傷も受け止めて、それを子どもたちに経験させないように、背中を押すような方法を学ぶことを考えていただきたいです」

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