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「私のことを知ってたんだ!」佐藤美弥が驚いた夫・藤井直伸からの初アプローチ。日本代表セッター同士の結婚を語った (3ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari

【五輪に出る夫への複雑な思い】

 五輪イヤーの2021年、選手としての道は大きく別れた。藤井は最終12人のメンバーに残ってオリンピアンに。一方の佐藤は、度重なるケガによりその道を諦めた。自分のオリンピックへの思いを藤井に託すことはあったのか。佐藤は当時の記憶を辿るように、ひとつひとつ言葉を噛み締めながら話した。

「引退も決めてオリンピックを諦めたつもりでも、簡単に気持ちの整理はできませんでした。まだ出場できる可能性があった時から、これまでにないくらい精神的にキツくなってしまって、彼のことを素直に応援できない時期もありましたね。オリンピックメンバーに残るまでの努力や苦労、出場することの重みなども一番理解できるはずなのに、どうしても羨ましいというか嫉妬のような気持ちが湧いてきてしまって......。大事な時期なのに、それを彼にぶつけてしまうこともありました。

 それは今でも、『本当に申し訳なかったな』と思っています。そこから気持ちを整理して、素直に頑張ってほしいと思えるようになりましたが、『私が出られなかった分も』という気持ちはなかったです。東京五輪はあくまで、彼の努力によって、自分で掴んだ舞台ですから」

 東京五輪では、藤井はベンチスタートで「2枚替え」で使われるケースが多かった。それでも、一緒にコートに入った清水邦広、東レのチームメイトである李博に正確なトスを上げ、勝利に貢献した。

「オリンピックで生き生きとトスを上げる彼に安心しました。もっと試合に出たいという思いもあったでしょうけど、しっかり自分の仕事を全うしていましたね。出場時間は長くなくても『チームのために』という強い気持ちが伝わってきましたし、チームが勝った時に心から喜ぶことができるのも、本当に尊敬できる部分です。

 むしろ緊張していたのは、大会が始まる前でした。彼は試合前でもあまり緊張しないタイプなんですが、オリンピック初戦の前日には、珍しく『やばい!』というメッセージがきて。その分、勝ったあとはすごくテンションが高かったですよ(笑)。大会が終わって帰ってきた時には『疲れたー!』という感じでしたが、実感がこもった言葉だったと思います」

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