9月に急逝した仲間のために。パナソニックが天皇杯優勝に込めた想い (2ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 堀江丈●撮影 photo by Horie Joe

 
 谷村さんの福岡大大濠高校時代の後輩でもある白澤健児は、準々決勝でサントリーをストレートで下して準決勝進出を決めた際に、この大会にかける想いをこう語っていた。

「この大会は、孝さんが亡くなってから最初の大会です。いつもベンチの孝さんから力をもらっているので、絶対に優勝という結果を孝さんに届けます」

 ひょうひょうとした性格で"天然キャラ"として愛された谷村さん。白澤は「よくそう言われるんですけど、高校時代はメッチャ怖かったです(笑)」と振り返りながら、「でも、パナソニックに入社したときは知らない人ばかりで緊張したので、孝さんがいてくれて本当に助かりました」と感謝の気持ちを口にした。

 そして、監督就任4期目にして初めてタイトルを獲得した川村慎二監督にとっても、谷村さんは特別な存在だった。

 パナソニックの選手だった川村監督は、2014年の引退と同時に監督に就任。1期目は天皇杯で準優勝、2期目はリーグ準優勝、3期目は黒鷲旗大会で準優勝と、これまでは"シルバーコレクター"に甘んじてきた。

 2017年5月の黒鷲旗の決勝をフルセットの末に落とした際は、「本当にあと少しなんですけどね。何がアカンのでしょうね」と言葉を振り絞っていたが、天皇杯での悲願の初タイトルに、「やっと勝てた」と万感の思いが込み上げた。

「孝とは、選手としても同じポジションで助け合いながらやっていましたし、僕が監督になってからも、計算できるベテランプレーヤーでした。『困ったときの孝だのみ』というところがありましたね。今日、福澤が最後に『孝さん優勝したよ!』と叫びましたが、チーム全員が同じ気持ちだったと思います。選手たちは、孝がベンチで見守ってくれているように感じていたでしょう。それが今まで足らなかった『あと少し』になってくれたんです」

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