【女子バレー】木村沙織、「壁」を打ち破ったエースの力
現在はトルコリーグ、ワクフバンクでプレイしている木村沙織プレイバック ロンドン五輪/女子バレーボール
25歳の夏。木村沙織が翔(と)んだ。エースは逞(たくま)しくなった。「火の鳥ニッポン」が大きな山を越えた。
8月7日の準々決勝。ライバル中国との一戦だった。五輪日程が決まった5月から、「8・7」は選手全員の頭に刻みつけられていた。
木村沙織は試合前に漏らした。「ずっと、8月7日を目標にやってきた。この大一番にバレー人生をかける」と。
木村は当たりまくった。コートで躍動する。笑顔がはじける。江畑幸子と並び、チーム最多タイの33点をマークした。特にジュースにもつれ込んだ第1セット。28-26。最後は木村がバックアタックで締めくくった。
サーブがよかった。課題のサーブカットも悪くない。だから、スパイクもよくなった。渾身(こんしん)の力を込めた。相手ブロックがよく見えた、と言う。
「ディフェンスでもしっかりがんばった。みんなが拾ったボールは絶対、得点にしていこうと思っていた。強い気持ちを最後まで持つことができました」
しびれる最終セット。マッチポイントを握られながら、木村が思いきりのいいスパイクを決めた。16-16。ここで控えセッターの中道瞳がピンチサーバーとして大仕事をやってのけ、日本が18-16でセットをもぎとった。
勝った。ついに勝った。日本が中国の高い壁をぶち破った。全セットが2点差という壮絶な試合だった。歓喜の輪。木村が、日本選手がコート中央に重なり合った。スタンドで見ていた母も、ファンも泣いていた。
1 / 3