錦織圭は4年ぶりの全豪オープンで、世界11位に「僕の打つボールが遅く感じた」とまで言わしめた (2ページ目)
【悲観的な空気を再び興奮の渦に変えた】
試合後、ポールは第2セットに向かう時の心境を、こう明かした。
「圭は、ものすごくスピーディなプレーをする。また、そうしている時の彼は、試合を完全に支配下に置いていた。だから僕は、まずは守備をがんばろうと思った。同時に第1セットのスタッツ(統計)を見たら、セカンドサーブでの取得率がものすごく悪かった。圭は僕のセカンドサーブを完全に狙ってきていたので、もっとファーストサーブを入れなくてはと考えた」
第1セットのポールのセカンドサーブポイント取得率は23%。ファーストサーブの確率は72%と十分に高いが、第2セットは75%まで上げ、同時にサーブでのポイント所得率をセカンドでも50%まで上げたのは、やはり世界11位の実力者だ。
第2セットを6-0で圧倒したポールは、第3セットも4-0とリード。この時点で見る者の関心は、勝敗の行方以上に、錦織が最後までコートに立てるか否かに移行したかのようだった。
だが、そんな悲観的な空気を、錦織は再び興奮の渦(うず)に変えてみせる。
ポールのダブルフォルトでまずはブレークすると、サーブからの3球目や、リターンで押し込んでからのボレーと、早い展開でポイントを決めていく。0-4から3-4に追い上げ、第8ゲームでも2本のゲームポイントに。相手の後ろ髪に、手が届いた。
「第3セット中盤の圭は、あまりにショットのスピードが速く、コースも次々に変えてくる。僕の打つボールが、何とも遅く感じたくらいだ」
世界11位も錦織の速攻に時間を奪われ、焦ったことを認める。ただ、最終的に第8ゲームでは、錦織の強打をラケットの先で引っかけるように切り返す、ポールの「手の感覚のよさ」が光った。錦織がこのゲームをキープできなかった時点で、事実上の勝敗は決する。
「後半は、ちょっと無理でしたね......足が」
試合後の錦織が、悄然とつぶやいた。最終スコアは、7-6、0-6、3-6、1-6。試合が終わった時、時計の針は深夜0時近くを指していた。
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