錦織圭・単独インタビュー 8カ月ぶりの復帰に「ちょっと浦島太郎感」 引退について「急にもう今年までって言うかも」 (2ページ目)

  • 内田 暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

 痛いながらも(試合が)できていたのでやっちゃったから、これだけ時間がかかってしまったので......本当にこれからは、スケジュールも考えないといけない。

 連戦にポンポンと出続けて、またトップ10に戻るっていうのが、あの時の目標ではあったんです、夏に戻ってきた時は。でも今は、いきなりそこまで行けないというか、そこをまず目指すのは違うかなというのは、ちょっと変わったところですね。まずは、身体優先でスケジュールも組まないといけないな、というところにはなってきていますね」

 いきなりトップ10を目指すのは、今は違うかな──と錦織は言った。ただそれは、あくまで連戦が求められるランキングシステムの構造上の問題。身体さえ万全なら上位勢とも戦えるはずという、希望と表裏一体の言葉でもあるだろう。

 そんな自身の「現在地」を測る意味合いもあっただろうか。大会開幕の2日前、錦織は世界8位のキャスパー・ルード(ノルウェー)と試合形式の練習を行なった。その時の手応えを尋ねると、彼は「いや、なんか......」と、困ったような笑みをこぼしながら、こう続けた。

「勝っちゃったんですよね、6-4とかで。昨日は、これまでの練習でも一番よくて。ここのコートが速くて自分に向いているというのもありますが、昨日は一番よかったですね。

 そういう点では、これが試合で出せればいいですけど......、そこですね、あとは。けっこう、いろんなことが急にバチッとハマってきて。トップの選手とやったのでリズムがよかったのかもしれないですけど、感覚もよかったし、狙ったところに入るし、ミスもそんなになかったし。試合前の練習としては、本当にベストでした」

 自分への期待値を上げすぎず、平常心で挑もうという心構えと、期せずして訪れた心技体すべてが噛み合い、思いどおりにボールが飛んでいく懐かしい快感。そのせめぎ合いが、あの困惑気味の笑みの正体だったのだろう。

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