錦織圭が可愛がる「195cmの目立ちたがり屋」坂本怜 全豪OPジュニアで優勝した17歳の正体 (3ページ目)
【錦織選手にもらった刺激を僕も伝えたい】
今回の全豪オープンジュニアで、坂本は体得した新たなプレースタイルを、グランドスラムのコートに雄大に描いていく。
サーブは、時速211キロを記録。フォアハンドを振り抜くと、ボールは破裂音を轟かせ、コートに刺さる。その攻撃力に従来の「シコさ」も加え、攻守表裏のラリーも披露。たとえセットを落としても、今の彼には「自分のプレーをすれば勝てるという自信」がある。
決勝戦の逆転劇は、そんな今の彼の集大成だ。第2セット以降は相手にブレークを許さず、相手に重圧をかけ続ける。心身ともに相手を組み伏せるかのような、力強い勝利を掴み取った。
優勝後にも披露した『侍ポーズ』は、「半年ほど前から始めた」と本人は取材等で答えている。ただ、それ以前からも『スーパーヒーローポーズ』など、勝利のパフォーマンスは恒例だった。
目立ちたがり屋で、冗談好き──。「写真を撮らせて」とお願いすれば「はい!」と爽やかに応じつつ、シャッターを押す直前に"変顔"をするなど、いたずらもお手のものだ。
ただ、それらひょうきんな振る舞いも、人から見られること、支えられていることを、強く自覚しているがゆえのファンサービス。真面目で繊細な内面の、裏返しでもあるだろう。
だからこそ全豪オープン優勝後、複数のテレビカメラが向けられるウイナーズスピーチで、坂本は日本語で真っすぐにこう言った。
「2024年のお正月に、日本で大きな地震がありました。今も苦しい思いをされている方もいると思います。僕がスポーツ選手としてできることは、少しでも明るい話題を届けること。なので今日、勝つことができて、とてもよかったです」
以前に「錦織に憧れた」という自身の原点について話してくれた時、彼はこうも言っていた。
「錦織選手にもらった刺激を、僕も日本のジュニアや、いろんな人に伝えたい。自分がもらったように、夢や希望を発信できる選手になりたいです」
全豪オープンジュニアの優勝は、そんな理想像のひとつの体現でもあるだろう。ただ彼は、グランドスラムジュニアの優勝は「夢ではない」と明言した。
夢はもっと、大きく、遠く──。
メルボルンのセンターコートで掲げたラケットは、その目指す先を真っすぐに指す。
著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。
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