錦織圭も「ちょっと読めない」望月慎太郎 自らの哲学を貫いてつかんだ覚醒のカギ (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【現役の伊藤竜馬が望月のコーチに就いた理由】

 伊藤は現在、世界ランキング621位の35歳。ここ数年、ケガなどで試合から離れる日も多かったが、全盛期には60位に至った"世界を知る男"である。

「慎太郎自身は、大事なとこで勝負してエースを狙いに行きたいけど、そこがこの2カ月くらい、『ずっと入らない』と。その状況を聞いて、絶対にメンタルとリンクしていると思ったんです。

 そこのメンタルは、僕がすごい苦労してきた部分でもあったので、そういう自分の経験を伝えたり意見交換していたら、向こうも心を開いてくれて。僕の意見を聞いてくれるようになり、なんか友だちのような感じで話せるようになったのが、コーチに就いたきっかけですね」

 屈強なフィジカルと豪打を誇る伊藤だが、その内面は実に繊細だ。

 加えるなら、伊藤ほどにジャパンオープンで重圧を覚え、そして結果を残してきた選手もいない。2012年には、当時世界12位のニコラス・アルマグロ(スペイン)にストレート勝利。その2年後には、当時世界4位のスタン・ワウリンカ(スイス)にも快勝している。

 特に、伊藤にとっても忘れがたいのがアルマグロ戦。試合前日には不調と重圧が重なり、「試合がしたくない」と涙を流したこともある。

 その自身の過去も、「慎太郎に話しました」と伊藤は明かす。

「慎太郎に言ったんですよ、アルマグロ戦のこと。『前日の練習はボロボロで、俺、もうやめようとしたんやで!』って。それで開き直ってトップ選手に勝ったこともあるし、何が起きるかわからないと言ったら、『やっぱりそうですよね』みたいに聞いていました」

 伊藤から聞かされたこれらのエピソードは、ジャパンオープン直近のデビスカップ(国別対抗戦)で苦しい連敗を喫した望月の心を軽くしたかもしれない。

 伊藤が望月に伝えたことは「シンプル」だ。

「まず、迷わない。迷って打つショットは一番エラーしやすいので、しっかり振りきることの徹底です。あとは、慎太郎はミスを引きずることが多いので、それを引きずらず、シンプルに考えること」

 それらの助言は、字にするとシンプルだが、誰にどう言われるかで宿る力は変わるだろう。

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