錦織圭のアスリート本能を刺激したツアー復帰戦「若手と対戦することが、復帰へのモチベーションだった」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

【負けた相手は苦手なタイプ】

 しかも、シャンが今季から師事する人物は、錦織の元コーチのダンテ・ボッティーニ。新たな愛弟子が錦織と対戦するに際し、ボッティーニが知識を総動員し、錦織対策を立てたのは想像に難くない。

 錦織にも当然、相手に手のうちを知り尽くされているとの懸念はあっただろう。だからこそ「早くポイントを終わらせようと、序盤から打つようにした」と言った。同時に、第2セットに入り相手が自分のプレーに適応してきたと見るや、戦い方も微調整していく。

 特にタイブレークに入った時は、「なるべくボールを追いかける」ことを心がけた。ナイトセッションゆえに、照明の光のなかでボールが見えにくく、高いボールが効果的だとも分析。狙いどおりにロブで相手のスマッシュミスを誘うなど、老獪にして痛快な勝利を手にした。

 一方で今大会、錦織が敗れたフリッツは「一発必中」の武器を持つパワープレーヤー。加えるなら、チャレンジャーの2大会目で錦織が敗れた18歳のアレックス・ミケルセン(アメリカ)も、似たタイプの選手である。

 フリッツ戦での錦織は、コース巧みに打ち分ける相手の高速サーブの前に、得意のリターンでなかなかプレッシャーをかけられない。試合を通じて手にしたブレークポイントは、わずかに1本。それも試合終盤、第2セットの第7ゲームでなんとか得たものだった。

 ミケルセンとの対戦でも、錦織はリターンゲームで苦しい戦いが続いた。特に疲労も見られた第3セットは、高く跳ねるセカンドサーブにタイミングが合わない。怖いもの知らずの若者の、実直なまでに振り抜くフォアの強打にもしばしば圧倒された。

 ブレークポイントまでは漕ぎつけるも、最後の一本が詰め切れずに6-7、6-3、1-6での敗戦。なお、対戦時のランキングは250位だったミケルセンは、最終的にこの大会を制覇。その後はツアーでも決勝進出の躍進を見せ、現在は140位まで駆け上がっている。

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