大坂なおみ、全豪3回戦の相手はまたも「鬼門」。元世界1位が絶賛するクリーンヒットで課題を克服できるか (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

【16歳で初対戦した時は完敗】

 ブレークを許した時の心境を、のちに大坂は「落ち着きを失いかけていた」と認める。ただ、彼女は不安をすぐに振り払い、続くリターンゲームでブレークバックに成功した。

 素早い気持ちの切り替えを可能にしたのは、相手のプレースタイルへの知識。そして、戦前からの心構えだったという。

 ブレングルと大坂は年齢で7歳の開きがあるが、成長の過程で戦ってきたステージには重なりも多い。

 大坂が下部ツアーを回り始めた14〜15歳の頃、ブレングルは選手間で、すでに「どんなボールも返してくることで有名だった」という。実際に両者は2013年に対戦し、その時はブレングルがストレートで勝っている。大坂はその試合内容を「彼女と握手したこと以外、覚えていない」と言うが、それはつまりは「いい記憶ではないから」だと苦笑いした。

 いずれにしても大坂は、ミスを引き出すブレングルの強みを知り、だからこそ今回の対戦でも、「ミスをしてもイライラしてはいけない」と自分に言い聞かせたという。

 もうひとつ、大坂が心がけたのが、「ポイントをしっかり組み立てて、"テニスIQ"を使うこと」である。

 かつて大坂と言えば、ボールを粉砕するかのように全力で叩く、超パワーショットが代名詞だった。ただ、驚異のスピードショットは、驚くようなミスと表裏。もしかしたら、ブレングルと初対戦した16歳の頃の大坂は、博打的ショットに頼り、ミスを重ねたのかもしれない。

 そんな彼女も今や、あのマリーが絶賛するほどの「クリーンヒット」の名手になった。ブレングルとの試合でも、ムキになって強打に頼るのではなく、左右に打ち分けネットにも頻繁に出た。

 ブレークバックしたあとは、再び落ち着きと支配力を取り戻す。最後は8ポイント連取で、一気にフィニッシュラインを駆け抜けた。

 マリーから得た称賛と、クセ者相手に演じた勝利。それらはいずれも、大坂が積んできた経験値とプレー面の成長を物語る。

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