大坂なおみ、昨年は差別廃絶アピールも、今年の全米OPに「メッセージはない」 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 全米オープンの前哨戦であるシンシナティ大会時には、リモート会見の席で「旧態依然としたメディアの姿勢を批判する一方で、既存メディアの恩恵にも預かっている現状のバランスを、どう取っていくべきと考えているか?」と問われ、涙を流し、会見を一時中座する場面もあった。

 ただ、その時にも大坂は「次の質問に移りましょう」とうながす司会者を、自ら「ちゃんと答えるべき質問だと思うから」と制して返答してもいる。

「現状では、そのふたつのバランスをどう取るべきか、まだ確信が持てていない。答えを探していきたいと思っているし、同時にみなさんにもそうしてほしいと思っている」

 それが、涙をこらえながら彼女が振り絞った思いだった。

 全仏での出来事から、あなたが学んだことは何か----?

 全米オープン開幕を3日後に控えた今回のプレトーナメント会見では、そんな直截な質問も飛んだ。ただ、この時の大坂には、狼狽の色はない。

「正直に打ち明けると、あの時は間違ったやり方をしてしまったと思うことがたくさんある。ただ私は、その時々の状況下で突き進んでしまう性格なので、すべてを悪く考えるべきではないとも思う。もちろん、今回多くのことを学んだので、同じようなことは二度と起きないと感じている」

 涙はない。言いよどみもない。相手の目を見て回答する、それが大坂の現在地だ。

 昨年は、黒人への差別廃絶を訴えるという"大義"を胸にコートに立った大坂だが、今大会に関しては「テニスの枠を超えて発信するようなメッセージはない」と言う。

「だから、今年は何が私を突き動かすのか? 自分でも、それが興味深いの」

 そう言い彼女は、穏やかに笑みを浮かべる。

 ノスタルジア----。もしかしたら、この地に宿るテニスの原体験こそが、今年の彼女を「突き動かす何か」かもしれない。

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