2020.09.27

錦織圭、復活のカギはどこにあるのか。
新境地を切り開き全仏へ

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

◆「錦織圭と父との愛情物語。25年前のプレゼントと息子への願い」はこちら>>>

 打球の呼吸......とでもいうのだろうか。

 テニス選手には、ともに練習をすると自ずと調子が上がる"理想のプラクティス・バディ"のような存在がいるという。

 錦織圭の場合、その筆頭に挙げられるのが、ディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)だ。

全仏OPで錦織圭は進化したスタイルを発揮できるか 身長170cmと小柄ながらパワーがあり、速いリズムでボールを叩くのを得手とするツアー屈指のストローカー。ミスが少なく、練習でも決して手を抜かぬ真摯なテニスへの姿勢も、一緒に練習していて心地よい理由かもしれない。

「小柄なところなど、親近感を覚える」「すごくいい奴」と錦織が深い共感を示せば、シュワルツマンも「圭はプレーも人間性もすばらしく尊敬している」と敬意を表する間柄。

 そのシュワルツマンと錦織は、全仏オープン開幕を2日後に控えた9月25日、秋を飛び越え冬の気配すら漂うパリの寒空の下でボールを打ち合った。

 シュワルツマンは先週のローマ・マスターズでラファエル・ナダル(スペイン)を破り、決勝でもノバク・ジョコビッチ(セルビア)と熱戦を繰り広げるなど、今最も油の乗っている選手のひとり。ナダルの剛球を下がることなくベースライン上で打ち返し、チャンスと見るや身体ごとボールに飛び込み強打するシュワルツマンの躍動感は、かつて錦織がナダルを赤土で追い詰めた姿とも重なる。

 その、実直で知的なファイターとボールを打ち合うことで、錦織は今の自分に足りない何かを獲得しようとしたのかもしれない。

「ブランクを感じた」

「ショットの感覚がまだない」

 3週間前に、約1年ぶりの復帰戦となったオーストリアの大会で戦いに敗れた時、錦織は実戦から離れた時間の重さを噛み締めた。

 先週のローマ・マスターズでは初戦で勝利を手にするも、2回戦では18歳の新鋭ロレンツォ・ムゼッティ(イタリア)に敗れ、「いいポイントはあるけれど、悪いポイントもすぐ出るのが安定感のないところ」と、振れ幅の激しさに言及した。