錦織圭の新コーチは「ビースト」。復帰戦で参謀につけた決意と理由 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 ただその後、錦織にやや息切れが見え始める。それに対し、キツマノビッチは落ち着きとストロークの威力を獲得しはじめた。

 セットを分け合い迎えたファイナルセット、錦織はより積極的にサーブ&ボレーを試みるが、疲れもあったかボレーの精度が落ちる。あるいは、ネットに詰めつつ見送った相手のリターンが、ベースラインを際どく捕える場面もあった。

 思い描くプレー像に、迷いはない。ただ、それを実現するには、まだ体力や勝負勘が伴わない......。それが、1年ぶりの実戦のコートに立つ錦織の現在地だろう。

「やはり、試合と練習は違う」

 試合後の錦織は、率直な思いを吐き出した。

「ブランクを感じた」「ショットの感覚がまだない」との言葉もあった。だがそれは、しびれる局面での選択や決断を重ねていけば、目指すプレーを体現できそうだとの手応えでもあるだろう。

「まだ実戦が必要。なるべく勝って試合数をこなしたい。それがこの3〜4大会で、一番大事になってくる」

 今季の目標はとくにないと言った錦織は、純粋なる試合への渇望を口にする。それら重ねた試合の先で出会えるのは、単なる以前の自分ではなく、新たな錦織圭であるはずだ。

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