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大坂なおみが悔やんだあの1本。
2連敗も「幸運」の可能性はまだある (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 苦笑いを浮かべた大坂は続くサーブで、この試合2本目のダブルフォルトをおかす。件のショットを機に4連続失点した大坂は、このゲームを落とし、そして最終セットを......つまりは、試合そのものを失った。

 最終スコアは4-6、7-5、4-6。試合時間は2時間30分。第3セットでは両者合わせて73ポイントを奪い合い、勝者と敗者を隔てた差は、わずかに3本だった。

 大坂本人が認めるように、決めるべきあの1本が流れを変え、終焉に向けて加速したのは間違いない。

 だが、全体を俯瞰すれば、試合の大勢を敗戦に向けて形成する、いくつかの構成要素か見受けられるのも、また事実だ。

 たとえばこの試合での大坂は、ネットに出ていく場面が目立った。それは時に成功したが、ケルバーのパッシングショットの餌食になることも少なくない。大坂はそのような戦術を、戦前からの策ではなく、試合のなかで自発的に行なったことだと説明した。

「今日のように、走力に長けた選手と戦うときには、ベースラインに居続けるわけにはいかないし......」と。

 この大坂の言葉は、示唆に富む。

 先の全米オープンで大坂を頂点に押し上げた要因は、長いラリーにも焦れることなく打ち合い、ジリジリと相手を土俵際まで押し込むような走力とスタミナ、そしてフィジカルの強さに下支えされた精神面の安定にあった。だが、ケルバーと相対した大坂は、相手の走力を恐れたという。

 その理由を雑駁(ざっぱく)に述べるならば、やはり「疲れ」ということになるのだろう。

「今季はすべてが、私にとって初めての経験ばかり......」

 そう認めた大坂は、「『なんであなたは、まだプレーしているの?』という身体の声が聞こえてくるみたい」と言って、小さな苦笑いを浮かべた。

 それでもシーズン最終戦を戦う大坂は、体力の最後の一滴まで振り絞ることを胸に期す。

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