今季最終戦を棄権。涙の大坂なおみを救ったバインコーチの笑顔
前向きに今シーズンを終えた大坂なおみ 涙が頬をつたい、目を真っ赤にしながら1回だけ右手を挙げてファンの声援に応え、テニスコートを去る大坂なおみを、アレクサンドラ・バインコーチは笑顔で迎え入れた。バインコーチの笑顔と彼女への労いを見れば、大坂のシンガポールでのゲームセットが、決して悲しい結末ではないことは明白だった。
シンガポールで開催されている女子テニスツアー最終戦・WTAファイナルズのラウンドロビン(総当たり戦、以下RR)のレッドグループは、第2戦を終えた時点で準決勝進出者が決まっていなかった。
第3シードの大坂なおみ(WTAランキング4位、10月22日づけ/以下同)は、レッドグループで、アンジェリック・ケルバー(2位、ドイツ)とスローン・スティーブンス(6位、アメリカ)に敗れ、2敗となっていたものの、わずかながら準決勝進出の可能性が残されていた。大坂がキキ・ベルテンス(9位、オランダ)に勝ち、さらにスティーブンスがケルバーに勝って、スティーブンスが3勝でグループ1位通過となり、他の3人が1勝2敗になることが最低条件だった。
RR第3戦で大坂は、左足付け根にテーピングをしてのプレーとなったが、第1セット第5ゲーム以降に症状が悪化。サーブのスピード、とりわけセカンドサーブが110キロ台まで落ちて、第1セット第7ゲームでブレークを許し、3-5となった後にメディカルタイムアウトをとった。テーピングをやり直したが好転せず、第1セットを3-6で取られた直後、左足のハムストリング負傷のため途中棄権を申し出て、リタイアとなった。
左足は、RR初戦で痛めたという。第3戦の前日練習では、約30分で練習を切り上げ、その後30分ほどかけて茂木奈津子トレーナーに左足の股関節やひざ関節などを入念にストレッチしてもらっていた。「今季最後の大会だからできる限りトライしたかった」と言う大坂だったが、ついに力尽きた。
「棄権しなければならなくて、本当に気が動転していました」と言う大坂は、客席から「よくやった」と声をかけられながら退場し、悲しい気持ちになって涙を流していたのを救ってくれたのが、バインコーチの笑顔と労いの言葉だった。
「サーシャは、この1年で私が成し遂げたことを本当に誇りに思うと言ってくれたんです」
1 / 4