2018.09.22

攻撃はボディブローのよう。
今も昔も変わらぬ大坂なおみの勝負哲学

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 アスリートには、人には触れられたくない敗戦が、誰しもいくつかあるのだろう。

 バルボラ・ストリコバ(チェコ)にとって、昨年のウインブルドン2回戦の大坂なおみとの対戦が、その類の試合だったのかもしれない。

大坂なおみは集中力を切らさずに安定感のあるプレーでストリコバ戦を制した「彼女とは3年前のこの大会で対戦しているけれど……」

 東レパンパシフィックオープンで、来たる大坂との対戦について問われたストリコバは、過去2度の対戦のうち、自身が勝利した試合のみに言及する。そこで、直近の対戦である先述のウインブルドンについて尋ねると、険しい表情に一層深い陰を落として、彼女は一気に吐き出した。

「あの試合の私は、いいプレーではなかった。やるべきことができなかった」

 でも、あのときの対戦は芝のコート。今回はハードコート。違うサーフェスなのだから、また違う試合になる――。過去の敗戦と今大会の関連を断ち切るように、32歳のベテランは断言した。

 大坂にとって昨年ウインブルドンのストリコバ戦は、昨シーズンでもっともうれしい一戦に数えたほどに、大きな意味を持つ勝利だった。

 ダブルス巧者でもあるストリコバは、多彩な手札を揃えるテクニシャンであり、いかなる状況でも試合をあきらめぬファイターでもある。そのストリコバ相手に、昨年のウインブルドンでの大坂は、フルセットの息詰まる攻防を6−1、0−6、6−4で競り勝った。安定感と集中力を最大の課題に掲げていた当時の彼女にとって、この勝利は、目指すテニスのひとつの到達点だったのだろう。

 そのときから1年2カ月が経過し、大坂は全米オープン優勝者に、そして世界の7位になった。対するストリコバは、30歳を越えた今も単複双方で活躍し、シングルスランキングも先の対戦時とほぼ変わらぬ地位を確保している。つまりは、多彩な技を誇るファイターは、この約1年間の大坂の成長を測る、格好のヤードスティックでもあった。