「ラケット破壊」への悔い。
感情を抑え込んだ加藤未唯が最後に笑うまで (3ページ目)
「今の私のテニス、見てもきっと、面白くないですよ......」
本戦出場を決めたにもかかわらず、不安そうに......あるいは少しすねたように彼女は言った。
葛藤を抱えながら足を踏み入れた本戦初戦で待っていたのは、加藤の決意を試すかのような相手であった。日本2番手の日比野菜緒は同期であり、兵庫県の同じアカデミーを拠点とするいわば同門。お互いの手の内を......つまりは長所も弱点をも、もっとも知り尽くしたプレーヤーだ。
その日比野との試合で、加藤は攻められてもしぶとくボールを打ち返し、最後まで自身と試合をコントロールして快勝する。そんな親友にしてライバルの姿に、日比野は多くを読み取っただろう。
『加藤選手のコートでの立派な振る舞いに、彼女がこの1ヶ月どれだけたくさんのことを考えて、乗り越えたんだろうと感じました』
試合後、日比野は感じたままをブログにつづった。
同門対決を制した加藤は2回戦と3回戦でも、試合中は会心のウイナーを決めても軽くガッツポーズを握る程度で、感情を表に出さず、不運な判定にも言葉を呑んだ。
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