錦織不在の全米OP。その重責は
杉田祐一と大坂なおみに託された

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 立場や覚悟が、人を変えることがある――。杉田祐一のように長い雌伏(しふく)のときを過ごした者ならば、それはなおのことだろう。

シンシナティでベスト8進出を果たした杉田祐一が全米オープンに挑むシンシナティでベスト8進出を果たした杉田祐一が全米オープンに挑む「上位のふたりが抜けたので、その間にしっかり、日本のテニスを盛り上げていきたい」

 錦織圭の長期離脱が発表されたとき、彼は前方を直視して、そうきっぱり断言した。

 シンシナティ・マスターズに向けた練習中、右手首を負傷した錦織。そして3月に左ひざ前十字じん帯を裂傷し、早々に今季の全休を発表した西岡良仁。それら2選手が戦線離脱したために自ずとフロントランナーとなった杉田は、自身に課された役目や周囲の期待から目を背けるでも、いなすでもなく、正面から受け止める覚悟を固めていた。

「ふたりが戻ってきたときに、いい状態で日本のテニスが盛り上がっているようにしたい」と語った杉田は、自らの言葉を現実にすべく、シンシナティでも快進撃を見せる。初戦で世界16位のジャック・ソック(アメリカ)を破ると、その後も急成長中の若手らを下してベスト8へ。しかし、「日本のトップ」の責務を果たしたいとの想いがやや空回りしたのが、準々決勝のグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)戦だった。

「本当にそれ(重責の影響)がモロに出たのが今日の試合だった。たくさんの方に期待してもらえるし、期待は自分自身にもある。そのエネルギーも使わなくてはいけなかったが、期待しすぎて本来やるべきことができなかった」

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