錦織不在の全米OP。その重責は杉田祐一と大坂なおみに託された (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 ただし、今大会に挑む両選手に不安要素がないわけではない。フェデラーは3週間前のカナダ・マスターズで決勝まで勝ち上がるも腰の痛みを覚え、翌週のシンシナティ・マスターズは欠場。ナダルもカナダで18歳の新鋭デニス・シャポバロフ(カナダ)に不覚をとり、シンシナティでも22歳のニック・キリオス(オーストラリア)に敗れた。

 ナダルは例年5〜6月のクレーコートシーズンで肉体を酷使し、栄冠を掴む代償として、後半戦ではケガや疲労に苦しめられる傾向がある。また、昨年優勝者のスタン・ワウリンカ(スイス)と準優勝のノバク・ジョコビッチ(セルビア)を含め、トップ11選手のうち4名が参戦選手リストから名を消した。

 かくして本命不在な今大会では、新世代が頂点を掴む可能性も高いだろう。その最右翼が今季、ローマ、そしてカナダのマスターズ2大会を制した20歳のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)。両親がテニスコーチで、兄のミーシャもツアープレーヤーというテニス一家に育った若者は、志(こころざし)的にもここまでの実績でも新王者の資質を十分に備える。課題は5セットマッチのグランドスラムを勝ち抜くだけの体力だが、シンシナティで初戦敗退したことがプラスに作用するかもしれない。

 立場の変化が覚悟を生み、覚悟が人を象(かたど)っていく――。テニス界が過渡期に差しかかり、流動性の高いなかで迎える今回の全米オープンは、新旧いずれの勢力が勝ち上がっても、そこには新たな物語がある。

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