杉山愛以来のクレーでの快挙。土居美咲の全仏オープンは期待大! (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 国内のエリート選手たちのなかには、幼少期は攻撃的なプレーでも年齢を重ねるに従って、世界で勝てるテニス――つまりは、カウンター主体のプレーに変えるよう指導されることも多いと聞く。クルム伊達も、高校のころまではフォアで攻めるテニスだったが、世界を転戦するうちに、「これでは欧米勢のパワーに対抗できない」と感じ、必然的に今のスタイルに辿り着いたという。

 土居のテニスには、そのような修正の手が入ることはなかった。いや、時には関係者たちから、「あのテニスでは体力がもたない」との声も聞こえてきたが、彼女は特に気にしなかった。そんな土居の、ある種の非主流的な足跡は、「重い球を打つことで、自分のテニスを生かすことができる」というクレーへの好感触と、無関係ではないだろう。

 もちろん土居にしても、そのような感覚を一朝一夕に掴んだわけではない。この数年、積極的に欧州遠征に出かけ、多くのクレーを経験したがゆえの手応えだ。

 また、今回のローマ大会で際立ったのが、競った試合での勝負強さ。初戦では、となりのコートから聞こえる大歓声に相手が心をかき乱されるなか、集中力を保ち競り勝った。2回戦は、昨年の全仏準優勝者(ルーシー・サファロバ/チェコ)相手に序盤でリードを奪い、終盤に追い上げられながらも、実力者の猛追を振り切ることに成功。3回戦では、過去3戦全敗と苦手としていた英国の成長株(ジョアンナ・コンタ)に第1セットを奪われるも、ファイナルセットの競り合いを抜け出し、一気にゴールラインへと駆けこんでいる。

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