2016.03.26

ミロシュ・ラオニッチ、
絶好調の秘密は「新レジェンドコーチ」

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 数字は時に、真実を正しく映し出すとは限らない――。いや、どの数字をいかなる角度で見るかによって、真実を見誤ることがあると言うべきだろうか。

今シーズン開幕から好調を維持しているミロシュ・ラオニッチ 196センチの長身を誇る25歳のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)の最大の武器は、サーブである。そのスピードは最高249.9km/hを計測し、ここまでのキャリアで奪った総エース数は4690本。これは、男子テニス史上で数えてもすでに27番目。1試合あたりの本数は約15.4本で、これはかつて「サーブ王」と呼ばれたゴラン・イバニセビッチ(クロアチア)の13.86本や、アンディ・ロディック(アメリカ)の11.69本を上回る数字である。

 そのラオニッチが、今シーズンはエース量産のペースが落ちていると、先週開催された『BNPパリバオープン』の会見で指摘された。彼の1セットあたりのエース数は、キャリア通算で1.21本。しかし今シーズンは、たしかに0.93本まで落ちているのである。

 しかし、両親ともに原子力科学者というアカデミックな一家に育った男は、表情ひとつ変えることなく、説得力に満ちた口調で即答した。

「それは、ボディ(相手の身体の正面に打つサーブ)を多く使い始めたからだ。それがあなたの問いに対する、極めてシンプルな解答だ。これまで僕と対戦する相手は、2方向……センターかワイドのどちらかを常に気にしていただろう。でも今は、3つ目の選択肢……正面がそこに加わったんだ」