錦織圭を支える「最強バックハンド」の今と昔 (3ページ目)

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 前置きが長くなったが、3月28日に行なわれたマイアミオープン2回戦。錦織はロシアのベテラン、ミハエル・ユーズニー(世界64位)と対戦した。ユーズニーは、片手バックハンドでスライスと強打を使い分ける業(わざ)に長ける選手。過去の対戦時(2013年)は、コートが芝だったこともあり、錦織はこのバックの緩急に悩まされてストレートで敗れた。

 その初対戦時から、約2年。強風の中で行なわれたマイアミでの再戦では、錦織は試合開始直後から「思ったほど、相手は打ってこないな」と感じていた。風の影響もあり、両者とも攻めあぐねる状況ではあるものの、この日のユーズニーはバックでリスクを犯して攻めてこない。錦織は、そこを勝利に連なる道と見た。

「今日は、自分のバックに伸びがあった」

 その感触が確信に変わったのは、第1セットの3ゲーム目。様子を探るようなバックのクロスの打ち合いから、錦織がギアを変えるかのようにタイミングとスイングスピードを一段上げると、黄色いボールは強風を切り裂き、相手のラケットに触れることなくコートを斜めに貫いた。その球筋の美しさに、客席から「オオッ!!」と感嘆の声が漏れる。

 この一撃で勢いを得た錦織は、第3ゲームを早々にブレーク。第7ゲームでも錦織が強打のバックを鋭角に2本連続で叩き込むと、ユーズニーは耐え切れずにネットにボールを引っ掛けた。このゲームも、バックハンドを軸に攻めた錦織がブレーク。第1セットを、わずか30分で奪い取った。

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