外国人記者が語る「私たちが錦織圭を愛する理由」 (2ページ目)

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki  photo by Getty Images

「1年を通してすべての大会を全力で戦っていたのでは、誰だって身体が持たない。選手としては受け入れにくいことだろうが、勝ちにいく大会に優先順位を設け、少しは力を抜く時期も必要になってくるだろう」

 選手たちに多くの義務が課される現行のシステムでは、トップ選手の出場大会は増え、必然的に試合数も多くなる。休みたくても休むわけにはいかないのだが、その中で体調やコートサーフェスの得手不得手に応じてメリハリを付けることが、体力を温存するほぼ唯一の手段だ。

 以上のように、体力面を最大の障害に挙げる記者がほとんどの中、技術面の課題に言及したのが、イギリス紙『テレグラフ』のサイモン・ブリッグス氏である。「ケイの最大の弱点はサーブ。上位の選手にコンスタントに勝っていくためには、サーブの向上が欠かせないだろう」というのが、ブリッグス氏の見立てだ。もっともそのことは、錦織本人やマイケル・チャン・コーチも重々承知。だからこそ昨年末のオフシーズン、錦織はチャンの指摘のもと、サーブの改革に取り組んできたという。

 加えるなら、サーブの向上は、ケガ防止とも密接に関わってくる命題だ。グエン氏は、「ケガをなくすためにも、グランドスラムの第1週では試合を短く終えることが必要だ」と指摘したが、サーブで簡単にポイントを奪うことは、体力温存に直結する。

 さて、ここまで海外記者たちに、「錦織圭の飛躍を妨げるもの」とのテーマで語ってもらったが、個人的に気になる疑問についても聞いてみた。

 ケイ・ニシコリの人間性は、彼らの目に、どう映っているのだろうか――?

「アメリカを拠点とする日本人のトップアスリート」ともなれば、異色の存在として多少の色メガネで見られるのは仕方ない。ただ、使われるメガネの色や見る角度、そして眺める距離や時間などによって、結ぶ像がそれぞれ異なるのが興味深い。

「ケイはアメリカに10年以上住んでいるのに、すごく日本人っぽいよね」

 笑顔でそう言ったのは、『スポーツ・イラストレイテッド』のグエン氏である。グエン氏は、人種の坩堝(るつぼ)たるサンフランシスコで育ったベトナム系アメリカ人女性。アジアの文化にも造詣の深い彼女の目には、錦織のはにかんだような笑顔や清潔感あふれるファッション、それにオフコートで見せるふとした仕草が、非常に日本人らしく映るという。分けても、彼女に強いインパクトを残したのが、錦織がミッキー・マウス柄のスマートフォンカバーを使っていたことだった。

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