外国人記者が語る「私たちが錦織圭を愛する理由」
1月特集 錦織圭 2015年の挑戦!(3)
「それはやはり、ケガだろう」
錦織圭がさらなる上を目指すその道中に、立ちはだかる障害とは何か――?
そのような問いを海外のベテラン記者たちにぶつけた時、最も多く返ってきたのは、ある程度予測できた答えである。
オーストラリアでも絶大な人気を誇る錦織圭「ケガが最大の敵となるのは、ケイだけではない。ロジャー・フェデラー以外のすべての選手は、大なり小なりケガには苦しめられている」
そう指摘したのは、20年以上のテニス取材歴を持つフリーライターのビル・スコット氏だ。主にDPA(ドイツ通信社)で執筆しているスコット氏は、「現在の男子テニスは、史上最高レベルにある」と断言する。ゆえに、選手の肉体はかつてないほどに酷使され、いかに才能があろうとも、フィジカルの強さなくして上位への道は開けないのが現状だ。また、フィジカルにかかる負担は、上に行くほど過酷にもなる。「ケガで数ヶ月休むことは、トップレベルでは致命的になる」。だからこそ、いかにケガを少なく抑えるかが重要だと、スコット氏は念を押した。
ケガを最大の障害に挙げながらも、同時に、「それさえ克服できれば、トップ3も可能だろう」と具体的な数字を示して語ったのは、アメリカ最大のスポーツ専門誌『スポーツ・イラストレイテッド』のグエン・コトニー氏だ。
「ケイは昨年、ATPマスターズ1000(※)を3大会欠場している。それにもかかわらず、世界5位にいるのはすごいことだし、逆に言えば、1シーズンを通して戦えればトップ3も見えてくる」
※ATPマスターズ1000=グランドスラムやツアーファイナルズに次ぐ規格に分類される大規模大会。優勝者にはATPポイントが1000点与えられるため、ランキングへの影響は非常に大きい。
グエン氏の指摘どおり、錦織は昨年5月のローマ・マスターズをふくらはぎのケガで、8月のカナダ・マスターズとシンシナティ・マスターズを足親指のう胞除去手術のため欠場している(3大会ともグレードはマスターズ1000)。ATPのルールでは、トップ選手たちはグランドスラム4大会と、ATPマスターズ8大会への出場義務があり、ATPランキングは1年間に出場した18大会の累計獲得ポイント(※)で決まる。だが、錦織は前出の3大会を欠場したため、15大会分しかポイントがカウントされていない。つまり、グエン氏が指摘するように、もし年間を通じてすべての規定大会に出られていれば、錦織のランキングは今より高かった可能性があるのだ。
※18大会の累計ポイントは、グランドスラム4大会とマスターズ8大会の計12大会での成績を加え、それ以外に出場した試合で高ポイントを獲得した上位6大会を加えて計算する。
ただ、スコット氏が強調したように、現在のテニス界は、「ケガなく戦うこと」が最も困難な時代でもある。それを踏まえた上で、フランスのスポーツ紙『レキップ』のビンセント・コニェ氏は、次のような意見を述べた。
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