【テニス】全豪直前。再び「トップ10」を明言した錦織圭の覚悟 (3ページ目)
しかし、実際にその目標地点が目の前にちらつき始めた昨年の6〜7月ごろ、彼は「トップ10」という言葉を避けるようになる。ウィンブルドンで口にした、「1回(トップ10に)入るだけでは意味がない。その地位に定着する力を確立するのが目標」といった言葉は本心だろうが、そう自身に言い聞かせる姿は、逆に、彼がいかに「10」という数字に縛られていたかを浮き彫りにもする。「数字的には近づいているけれど、まだ遠いと感じている」「12位というのは正直びっくり。自分の力は20位くらいだと感じている」、そう口にしたのも同じ時期だ。その後は、全米オープン初戦敗退など苦しい日々を経験し、「活気が湧いてこない」との言葉も残した。「あんな状態になったのは、テニスをやっていて初めて」。後に彼は、そのようにも告白している。
その錦織が、今再び、トップ10を明言した。
元世界2位のマイケル・チャンをチームに加えたことは、彼の覚悟が最も端的に表れた事例だろう。「マイケルは経験が豊富だし、トップ10に長くいた選手。僕の目標は、今年中か、あるいは近い将来にトップ10に行くことなので、彼のような伝説的な選手から多くを学びたい」。錦織はチャンをチームに加えた理由について、そう語った。
そびえる壁を打ち破るのに、どれほどの苦しみを伴うかを熟知した上でなお、彼は自分にも周囲にも、正直であろうとしている。日に焼けた顔を真っ直ぐ前に向け、濃密なオフシーズンと前哨戦で得た数々の自信を胸に、錦織圭はシーズン最初のグランドスラムへと歩みを進めていく。
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