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【テニス】実り多き錦織圭の全豪。「自分の力が通じることが分かった」 (2ページ目)

  • 内田 暁●文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 一方のマリーも「僕らはふたりとも動きが良く、オールコートでプレイする。同じコーチ(ブラッド・ギルバート)に師事していたこともあり、似たタイプの選手だと思う」と、互いの相似性を認めていた。さらには「圭とは若いころから、何度も練習してきた。最近の彼はボレーがすごく良くなっているし、身体もフィットしている」と、ここ数ヶ月の錦織の成長を身近に感じているようだ。

『脚が速いオールラウンダーで、守備範囲が広く、安定感がある』。そのようなふたりの一流選手がぶつかり合った当然の帰結(きけつ)として、試合はミスが少なく、長いラリーが続く高質なものとなる。それは、開始まもない第2ゲームに繰り広げられた、1本のポイントを巡る攻防でも明らかだった。力強いクロスの交換から、錦織が先にコースを変え、仕掛ける。トップスピン、スライスなど多彩な球種がネット上を飛び交い、最後はマリーがスライスを流しこむようにして、長く激しい打ち合いに終止符を打った。時間にして55秒。42本に及ぶラリーの末にマリーが奪ったポイントが、この試合が何たるかを見る者たちに告げていた。
 
 同時に錦織は、自分がいかなる選手であるかを、ひとつのプレイで1万5千人の観客に強烈にアピールして見せる。第1セットの第5ゲーム。ドロップショットで揺さぶりをかけたマリーが、とどめをさすべく、柔らかなタッチで錦織の頭上をふわりと越すロブを放った。「勝負あった」......誰もがそう思った次の瞬間、皆が一斉に息を飲むことになる。ボールを必死に追った錦織が、ネットに背を向けたまま、両足の間からロブを放ったのだ。マリーも必死に飛びつき返球するが、体勢を立てなおした錦織が右腕を振り抜くと、黄色いボールは立ち尽くす相手の横を抜け、コートへと突き刺さる。すり鉢状のアリーナから立ち昇った大歓声は、錦織が持つテニスの魅力が引き起こしたものだった。

 似たスタイルを持つふたりの攻防の中で、最終的に両者を大きく隔てたのは、タンクに残る燃料の差だった。それは、両者のここまでの勝ち上がりを見比べても明らかだ。4試合の合計時間が7時間48分のマリーに対し、錦織はシングルスだけで11時間48分。ミックスダブルスも含めると、14時間を超えていた。「初戦の体力を100とするなら、今日は30~40くらい」(錦織)という燃料差は、そのままスコアに反映された。

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