ラグビー日本代表・齋藤直人が欧州最強クラブへ移籍 南半球を選ばなかった理由 (4ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji

【ライバルは世界的スター】

 齋藤はトゥールーズを選んだ経緯をこう話す。

「チャンピオンチームで多くのタレントがいて、本当に学ぶべきことが多い。試合数の多さも魅力として感じていた。ポジティブに捉えると(世界的なSHの)デュポンと一緒にやれるし、トゥールーズでプレーできる機会は本当に限られている。9番としての登録は3人しかいない。限られたチャンスだったので、迷わずトゥールーズでプレーしたいと思った」

 ジョーンズHCは、齋藤の移籍が決まると「おめでとう!」と祝辞を送ったという。

「齋藤は選手として成長し続けているし、世界最高のSHのひとりになれる可能性がある。欧州王者であり世界屈指のクラブであるトゥールーズに行けば、デュポンやヌタマックといったすばらしい選手たちと常に一緒にプレーし、競い合うことができる。それは選手を大きく成長させる。リーチ(マイケル)がチーフス(ニュージーランド)でプレーしていた時のように、齋藤もその体験・経験を日本代表に還元してくれるでしょう」(ジョーンズHC)

 齋藤は7月21日のイタリア代表戦後に渡仏する予定だ。ジョーンズHCとの話し合いにもよるが、8~9月の日本代表のテストマッチには出場しない可能性もある。デュポンがトゥールーズから離れている間に試合に出て、首脳陣へのアピールが必須だからだ。

「自分の一番の強みはパスとテンポ。トゥールーズのラグビーもアタッキングで(自分に)すごく合うと思っています。チームから信頼を勝ち取って、試合に出るのが第一優先。移籍1年目だからとか、日本人だからとかと、そういう考えではなく、最初から積極的に、もちろん9番の1番手を狙うつもりでいきます」(齋藤)

 トゥールーズとの契約は1年だが、その後も海外でプレーを続ける意向を持っている。ラグビー選手としては決して大きくない165cmの体躯だが、「ワールドクラスの9番になる」という目標はひとつもブレない。小さい頃から日本で培ったパスさばきとフィットネスを武器に、齋藤直人の新しい旅が始まる。

プロフィール

  • 斉藤健仁

    斉藤健仁 (さいとう・けんじ)

    スポーツライター。 1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。2000年からラグビーとサッカーを中心に取材・執筆。ラグビーW杯は2003年から5回連続取材中。主な著書に『ラグビー『観戦力』が高まる』『世界のサッカーエンブレム完全解読ブック』など多数。

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