ラグビー日本代表・齋藤直人が欧州最強クラブへ移籍 南半球を選ばなかった理由 (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji

【6度の欧州王者に輝く最強クラブへ】

 これらはすべて、海外移籍を視野に入れての行動であることは明白だ。昨年まで東京サンゴリアスのアドバイザーも務めていたジョーンズHCにも度々、将来について相談していたという。

 そしてワールドカップ後、斎藤は海外移籍へ向けて本格的に行動を移した。

「ワールドカップに4試合出られたが、ハイプレッシャーのなかで自分の力を十分に出せたかと言われると、全然そうは思えなかった。ああいった舞台で能力を出すには、常にそういう高いレベル、高いプレッシャー、強度のなかでプレーし続ける必要があると思った」

 次なるステップに向けて、齋藤は移籍先を南半球ではなく、英・仏のヨーロッパを中心に交渉していった。欧州クラブのほうがスクラムハーフからのキックを重要視しているからだ。

「ワールドカップを経験して『何を一番、伸ばしたいか』と考えた時、思い浮かんだ答えがキッキングゲームでした。南半球より北半球のクラブのほうが、よりキックが重要なリーグなので、そこでプレーしたいと考えていました」

 興味を示してくれたクラブは4、5チーム。そのなかからフランスの強豪トゥールーズと交渉を進め、移籍期限ギリギリの6月30日に正式契約を結んだ。トゥールーズが齋藤をほしがった理由のひとつには、7人制ラグビーでパリ五輪に出場するフランス代表の絶対的SHアントワーヌ・デュポンがオリンピック後に休養を取る影響もあったからだ。

「話は進展していたが、話をもらってからけっこう長くて、本当に(決まって)ホッとした。家族をはじめ周りの人の理解、それから代理人の協力があって実現したことだと思っています」

 トゥールーズは昨季、6度目の欧州王者に輝いたヨーロッパ最強クラブ。前出のデュポンやSOロマン・ヌタマックのフランス代表スターだけでなく、ニュージーランド代表、オーストラリア代表、イングランド代表、アルゼンチン代表など世界のトップ選手がずらりと揃っている。

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